吾輩は乘井家の猫である。今年19歳になる。人間で言えば90歳の老猫である。
吾輩の女主人は弁護士という仕事をしているらしい。この女主人、大の猫好きと本人は言うが、猫好きという割に世話は雑だ。「肉球ぷよぷよ、可愛いね~!」などと言って猫撫で声でたまに擦り寄ってくるが、家では大体ソファでうたた寝。僕が「遊ぼうよ~」と膝をトントンしても、一瞥して、また背を向け寝る。猫愛の底が見える。
ところが、世の中、上手く出来ている。このぐうたら女主人の相棒が実にマメな奴で、細やかに吾輩の世話をやく。この前も「18歳以上シニア猫の猫缶はこれが良いらしい」などと言いながら新しい缶を買ってきた。食べ慣れた猫缶より薄味で最初物足りなかったけど慣れるとこれもいい。老猫の健康へのこんな心配り、あの女主人には無理だ。男主人、トイレの掃除も隅々までやってくれるし、「遊ぼうよ~」と膝をトントンすると気に入りのおもちゃで付き合ってくれる。ありがたい。女主人とこの相棒、今のところ仲良く暮らしているが、もし、喧嘩別れする時にはこのマメな男主人の方についていくと吾輩、固く決めている。当たり前だろ!吾輩の世話を毎日してくれてるのだから。最近人間世界では二拠点生活なるものが流行りらしいが、数日置きに女主人の家と男主人の家をたらい回しというのも、真っ平ゴメンだ。吾輩はペットではない!(いや、ペットだけど飼い主の都合で生きているわけではない!)。僕にだって気持ち良く風が通る昼寝の場所や雷が鳴るときの絶好の隠れ場所がある。家は城。あっちこっち飼い主の都合で連れて行かれるのでは落ち着かない。
だけど、「肉球ぷよぷよ」おばさんが会いたいというのなら、たまに会ってあげてもいいけどね。ニャン。