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2017年07月26日
仕事・労働性差別・ジェンダー
有村 とく子

「介護」と女性  【弁護士 有村とく子】

「介護離職」は女性の労働問題

政府が「ニッポン一億総活躍プラン」を閣議決定し、「介護離職ゼロ」を目標の1つに掲げて、「女性の活躍」を強調したのは昨年の6月2日のことでした。あれから1年余りが経ちますが、介護離職は減らず、女性活躍の場が広がったという実感がもてないのが現状です。

「介護」は、育児とともに、「女性」が「家庭」において、「無償」で行うものという性別役割分担の意識の影響を強く受けてきました。政府が目指した「介護離職ゼロ」とは、介護のために離職する人をなくすということ。介護サービスに従事する労働者の8割は、女性だと言われていますから、介護離職の問題は、まさに女性の労働問題だと言えます。

 

3つの憲法問題と3つのジェンダー問題

今年3月4日、日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会主催で開かれたシンポジウム「ニッポン一億総活躍?介護とどう向き合うか〜ジェンダーの視点から〜」に参加してきました。基調講演をされた南山大学法学部の緒方桂子教授は、介護をめぐって登場する、行政(国・都道府県・市町村)、要介護者、介護事業者、介護職従事者、介護離職者の関係を、3つの憲法問題と3つのジェンダー問題として捉えておられました。

憲法問題として指摘されていたのは憲法25条です。1つめは、厚労省による国庫支出が抑制されると、介護事業者は経営の「合理化」に迫られ、その結果、介護職員の低賃金化・不安定雇用化が進み、そのことが介護職員の貧困問題に発展するということです。

2つめは、事業者の経営合理化によって介護労働の「マニュアル化」が進み、福祉労働の本質的部分が切り落とされることとなり、介護を要する人が心の通った介護を受けられない危険性が出てくるという問題です。

3つめは、介護の上乗せサービスを受けるための資力がない場合、そのケアは家族が無償で行わざるを得ないことになり、そうなると、親の介護のためにそれまで就いていた仕事を辞めざるを得なくなり(介護離職)、親が亡くなると、その時点で自分の貯えができていないことに気づく、そして、年金も不十分であるため、介護者自身が貧困に陥ってしまうという問題です。介護の現場では、憲法25条が保障する健康で文化的な最低限度の生活を送る国民の権利がないがしろにされているという実態があります。

介護をめぐる3つの「ジェンダー問題」とは、①介護労働に従事するほとんどの人が女性であること、②その女性達が低賃金・不安定雇用の下で働いていること、③家族の介護を引き受け、介護のために離職するのも、女性が多いこと、を指します。これらの問題は、これまで繰り返し指摘されてきたものの、改善されてきませんでした。介護はその専門性が正当に評価されず、「女性が行う職業」として、低賃金に位置付けられてきたことが根底にあると指摘されていました。なるほど、そういう分析の視点があったのかと思いました。

 

政府を動かす世論づくりを

憲法25条第2項は、「国は、国民生活のあらゆる側面において、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と定めています。介護職に従事する人には労働条件の最低保障や身分保障、安全確保のための対策を、介護を引き受ける家族には、その人の仕事や人生との両立ができるような対策を具体的に講じること、それが国の責務であると言えます。

ところが、介護事業所は人材不足で低賃金の「ブラック企業」化が進んでおり、そのことが介護サービスの質の低下を招いているという実態も現場からの報告として上がっていました。

超高齢化社会に突入した今、私達にとって介護の問題は、必ず付いてまわることです。職業としても、家族の一員としても、女性の人生に今後も影響を与えて行くものです。生まれながらの性が女性であることによって、介護の場面でも女性にしわ寄せ(不利益)が行くという実態がこれ以上放置されると、やがては社会全体が疲弊してしまい、「女性の活躍」どころではなくなると思います。

政府の掲げる「介護離職ゼロ」・「女性活躍」政策を単なるスローガンで終わらせないように、私達自身が意見を出し、あきらめないで政府を動かす世論を作っていくことが大切だと思います。

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