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2018年08月30日
DV子ども

「マルトリートメント」が引き起こす深刻な影響 〜『子どもの脳を傷つける親たち』を読んで  【弁護士 和田谷幸子】

1. 「マルトリートメント」って?

昨年、福井大学子どものこころの発達教育センターの友田明美教授によって『子どもの脳を傷つける親たち』というタイトルで書籍(以下、「本書」と言います)が出版されました(NHK出版新書、2017.8.10発行)。

以前、友田教授の公演に参加する機会があり、その際に「マルトリートメント(maltreatment)」という言葉を初めて耳にし、それが発達途上にある子どもの心身に深刻な影響を与えることを知りました。

今回、本書で登場する「マルトリートメント」という言葉の意味をご紹介しながら、虐待について、あらためて考えなおしたいと思いました。

児童虐待防止法第2条では、「児童虐待」を①身体的虐待(身体に外傷を与える行為)、②性的虐待(わいせつ行為)、③ネグレクト(育児放棄)、④心理的虐待(暴言、著しい拒絶、面前DV等の心理的外傷を与える行為)と大きく4つに分けて定義しています。

これに対し、「マルトリートメント」とは、上記の「虐待」よりも広い概念で、日本語では「不適切な養育」という意味ですが、「マルトリートメント」が子どもの心をどれほど傷つけ、そして、幼い脳にいかなる変化をもたらすのか、本書では、脳科学分野における研究結果から、わかりやすく説明してくれています。

 

2. マルトリートメントによって子どもの脳は変形する

本書では、脳の画像診断法に基づく研究によって、マルトリートメントが、発達途上にある子どもの脳の正常な成長を阻害し、その結果、深刻なトラウマ症状を引き起こすことが語られており、マルトリートメントの具体的内容や経験年齢、期間等により、ダメージを受ける脳の場所や脳の萎縮率が異なることが画像をもとに具体的に説明されています。

また、本書のなかでショッキングだったのは、身体的暴力を目撃した場合より、罵倒等の言葉の暴力を見聞きしたときのほうが、子どもの脳へのダメージが大きいという事実でした。また、研究によれば、DV目撃と暴言の組み合わせが最も重篤なトラウマ反応を残し、身体に対する直接的な暴力が無くても、子どもの心や脳は、大きく傷つけられるという事実でした。

 

3. 子どもの脳が持つ回復力のすばらしさ

虐待やマルトリートメントにより、子どもの脳が変形してしまうというのはとてもやり切れない悲しい事実です。しかし同時に、子どもの脳は、いったん変形したとしても、「脳の傷は癒される」こともわかってきました。

そして、回復のためには複数の治療法があるようですが、何よりも大切なのは、早期に治療、対応するということです。

 

4. 加害者も過去において被害者だった〜負の連鎖を断ち切る

本書では、被害を受けた子どもだけでなく、加害親に関して語られている箇所もあります。

そこでは、加害親もまた被害者であること、つまり、加害親もまた、誰かにやさしく守ってもらいたい子ども時代に、無視されたり、暴言をはかれたり、叩かれ、殴られてきた人たちであること。人は模倣する生物であるが、彼らは、モデルとする家庭の形を知らず、愛情を受け取っていなかったために、親となった時にそれを与える方法がわからない、と。

余談ですが、私が普段担当しているDV事件を振り返ってみても、加害者の成育歴を聞いてみると、加害者もまた元被害者であった、という友田教授の上記指摘は大変腑に落ちました。

また、負の連鎖を断ち切るため、加害親や被害児童に関わる自分に何ができるのか、そういった視点を大切にしながら、今後も日々の業務に取り組みたいと思いました。

 

5. 終わりに

本書について、本稿だけでは紹介し尽くせませんが、もし関心を持っていただけたら、ぜひ一度、手に取ってみてくださいね。

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