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ニュースレター

2018年08月30日
結婚・離婚子ども性差別・ジェンダー
角崎 恭子

「寡婦控除」を知っていますか?  【弁護士 角崎恭子】

不平等な規定、地域によっても差が

所得税等における「寡婦控除」という控除の制度をご存知でしょうか。2015年夏のニュースレターでも触れましたが、これは、戦後、戦争で働き手である夫を失った妻や子の支援のために設けられた制度です。

現在の仕組みでは、配偶者と死別又は離婚した後、婚姻をしていない人や、配偶者と死別又は離婚した後、生計を一にする子を養っている人等については、収入から、所得税については27万円、地方税(住民税)については26万円を控除して所得を算出し、税額を計算してもらえます(所得税法81条、租税特別措置法41条の17第1項、地方税法314条の2第1項第8号及び第3項)。上記の条件をいずれも満たす場合には、控除額が上がることもあります。

例えば、一度結婚した後に離婚し、その後、結婚しないで子を産んだ女性には、この控除が適用されます。ですが、一度も結婚しないで子を産んだ女性には、この控除は適用されません。この2ケースでは、母子世帯に対し税制上の優遇措置を設けるべきか否かについて、状況に差はないはずですが、非常に不平等な規定になっています。

寡婦控除によって、自治体等が、所得を基に計算する保育料や公営住宅の賃料等も下がりますし、医療費の助成を受ける場合や、児童扶養手当を算出する際にも、所得の差は影響を及ぼします。家族の状況にもよりますが、税金や保育料等で、1年におよそ10万円ないし12万円程度の差が生じることもあるようです。

このような差別は非常に不合理ですし、収入の低い母子世帯にとっては、上記の金額は大きな差です。また、統計によれば、死別・離婚を経た母子世帯と、未婚の母子世帯とでは、未婚の母子世帯の方が収入が低いようです。

この不合理な取扱いを是正するために、自治体が条例等で定める保育料や公営住宅の賃料について、寡婦控除の適用がない人にも、適用された場合と同じ計算方法を用いる自治体が多数あり、これを、「みなし適用」と呼びます。ただ、そうなりますと、住んでいる地域によって差が生じることになります。

 

「みなし適用」で差別が解消されるのは一部だけ

そのような現状に対し、厚生労働省は、政令等を改正し、厚生労働省が所管する保育料や医療費の助成、児童扶養手当の支給に関し、全国的に「みなし適用」を行うことを決めました。

ですが、寡婦控除を定める所得税法が改正されていないため、所得税や住民税の税額や国民年金保険料の減免については、差別が解消されていません。報道によれば、財務省の担当者は、寡婦への支援制度は一家の大黒柱を失った人たちへの配慮で、もともと大黒柱がいない未婚は当てはまらないと説明し、寡婦に未婚を加えると、結婚して出産するという伝統的な家族観の変化を主導する話になりかねないと述べたそうです(東京新聞2018年2月4日 朝刊)。

税については、本来、その人にどれだけ税を担う能力があるか、という観点から負担額が決められるべきです。もともと「大黒柱」がいなかったのであれば、その世帯は、より経済的に困窮しているはずで、上記の財務省の担当者の発言は、現実を無視しているとしか思えませんし、実体のよく分からない「伝統的な家族観」の維持のために、困窮している母子世帯が放置されるべきという見解は、到底受け入れられません。

今回、厚生労働省による全国的な「みなし適用」によって、差別の一部は解消されますが、子どもの貧困が問題になっている中で、所得税法が改正されないことは、非常に残念でなりません。

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