なぜ、結婚をしないのか
今年に入って、「結婚をしない男女から男女共同参画を考える」というテーマで二度講演をさせていただく機会がありました。
平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(内閣府が実施、対象は20歳〜39歳の未婚・既婚の男女)によると、結婚をしていない理由は、「適当な相手にめぐり合わないから」「自由や気楽さを失いたくないから」という理由が男女問わず多いという結果です。そして、結婚をしていない男女の4割近くが結婚相手(適当な相手)に出会うことは難しいと感じています。
どうして結婚のハードルを高くおくのかですが、婚姻届を提出すると様々な法律効果が婚姻をした男女に生じます。それが「重い」と感じたり、その法律効果が生じる関係になるには様々な条件をクリアした人でないといけないと思う人が増えてきているのではないでしょうか。また、自分の周囲で離婚をした人の話などを聞き、結婚に慎重になる人もいるでしょう。
気軽にカップルになれる?事実婚
昨年、新垣結衣さん主演のドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」がヒットし、「契約結婚」や「事実婚」が注目され、事実婚を肯定的に捉えた視聴者が多かったと聞きます。事実婚とは、法律上の婚姻をあえてせず、社会的に夫婦と同一の生活を送ることを言います。婚姻の意思がない点で「内縁」と区別されます。
婚姻よりも緩やかにつながりたい、イエ制度の延長の戸籍制度に抵抗がある、夫婦別々の氏でいたいなど様々な理由で事実婚を選択しているカップルが存在します。かくいう私も事実婚です。とはいえ、ヨーロッパでは,同棲を含めた事実婚の実行率は高く、20代の過半数が同棲・事実婚をしているという統計がありますが、日本では数パーセントにすぎません。
フランスやスウェーデンには「パックス」や「サンボ」と言われる制度があり、届出をすることで事実婚が公式のものとなっています。婚姻とは異なり、共同生活の約束をするイメージです。当事者が相互の権利と義務の関係を決め、契約内容にした契約書を自由に作成し、関係性を決め、離婚よりも柔軟に関係の解消を行うことができます。
法律上認められている制度ですので、婚姻と同様の税制の優遇や社会保障を受けることができます。また、カップルの間の子どもは嫡出子や非嫡出子という区別はされず、婚姻と同様に扱われます。それゆえ、ヨーロッパでは、婚外子の比率が高く、スウェーデンやフランスでは約50%です(日本では2%くらい)。また、パックスやサンボなどの制度は、同性カップルにも適用されるもので性中立的な制度となっています。
新たな選択肢を
事実婚を法律で認めるということは、結婚をしない、あるいは躊躇している人に新たな選択肢を与えることになるのではないかと思います。今、事実婚をしている人には、デメリットはなく自分らしさを実現できていて、快適という人もいます。事実婚カップルにも、扶養義務や年金の受給権があり、関係解消の際の財産分与や慰謝料請求権もあり、婚姻と殆ど変らない法律効果が得られます。
しかし、社会的に未認知な部分もあり、生命保険の受取人にパートナーがなれない(保険会社による)、住宅ローンでペアローンが組めない(銀行による)などのデメリットを私自身経験したことがあります。また、子の親権はどちらかの単独親権になるので、パートナーと話し合う必要があります(ちなみに、子の親権は母、氏は父など親権者と氏を分けることは手続きを経れば可能です)。
この間、依頼者の方からも事実婚に関する質問を受ける機会が多くありました(お悩みの方はご相談を)。これから一層、家族の形は多様化してくると思います。選択的夫婦別姓や同性婚を認めず婚外子差別のある社会ではなく、多様な家族を認める社会を追求しつづけていきたいと思います。