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2020年02月18日
DV子ども
乘井 弥生

DVの陰に虐待あり、虐待の陰にDVあり  【弁護士 乘井弥生】

1 痛ましい子どもに対する虐待事件

 

昨年も子どもに対する虐待事件が数多く報道されました。実父、継父、あるいは母親の交際相手からの子どもに対する虐待事案を見聞きする度に思うのは、「子どものお母さんはどうしていたんだろう?」ということです。重篤な被害は突発的に起こるものではなく、その前に予兆や同種の虐待があったであろうに、「お母さんは子どもを守れなかったのだろうか?」「子どもを連れて逃げられなかったか?」との思いです。でもそれが容易でないことも日々DV相談を受けて感じることです。

「DVの陰に虐待あり、虐待の陰にDVあり」です。

 

2 DVと虐待との関係

 

私たちが直接相談を受けるのはDVの被害を受けている大人の女性からですが、DVが起きている家庭では、多くの場合、子どもも被害者です。2017年度に内閣府が実施した「男女間における暴力に関する調査」によると、配偶者からのDVがあった場合、2割以上の割合で子どもも加害者から暴力被害にあっているとの調査結果が出ています。

また、暴力の矛先が直接子どもに向けられたものでなくても、子どもの前でDVが行われること(面前DV)は子どもへの心理的虐待にあたります。家の中で家族が傷つけられている状態に晒されることは子どもの心身が傷つけられているのと同じことです。

DV加害者が「しつけ」と称して子どもに手を挙げ、さらに、DV被害者にも同様の行為を押し付け、DV被害者自身が暴力の加担者(共犯関係)になってしまう場合もあります。離婚の相談に来られた女性が「息子は落ち着きがないからしょっちゅう夫から投げ飛ばされていた。でも、私のしつけが下手だったから仕方がない。私も叩いていた。」と言っていたことがありました。

また、それ以外にも、DV加害者が子どもに「お前の母親はダメな女だ。お母さんの言うことは聞かなくてもいい。」と教えこむことで、子どもが母親を見下す関係ができてしまい、DVから逃れ子どもと避難したあとも子どもとの関わりで長く困難を抱える女性もいました。

DVの本質は相手を支配しコントロールすることで暴力はその手段である、と言われますが、家庭の中で力を持つ者が、家族の一部だけを支配し他に対しては支配していないということはむしろ稀です。支配とコントロールの強い渦の中で、家族全員が巻き込まれていることの方が多いとみるべきでしょう。その意味でDVと子どもに対する虐待は極めて密接な関係にあります。そして、その強い渦の中から、経済的困難を抱える女性、特に幼児を抱える女性が抜け出すことは容易ではありません。

 

3 母親を孤立させないための支援強化の重要性

 

先に紹介した内閣府の調査によれば、DV被害にあった女性が加害者と別れなかった理由として「子どもがいるから 66.8%」という数字が出ていました。暴力的環境は子どもの心身に悪影響を及ぼしているにもかかわらず、皮肉にも「子どものために」その環境を変える術をもたず必死に維持している母親がたくさんいます。

誰もが家庭の中で暴力被害を受けることなく生活できるよう社会が支援をしていくことは大事なことですが、何よりも、力を持たない子どもの傍で日々生活をしている母親を支え、孤立させないための支援の強化は、社会にとって急務の課題といえます。

なお、虐待防止対策とDV被害者の保護対策の強化を図るため、関連する機関は相互に連携・協力すべきことを明確にしたDV防止法の一部改正を含む「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」が昨年6月19日に成立しています(改正DV防止法の施行日は今年4月1日になります)。

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