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2020年02月18日
結婚・離婚DV性差別・ジェンダー

リレーエッセイNo.37 『DV被害からの離脱・回復を支援する―被害者の「語り」にみる経験プロセス―』   -新見公立大学健康科学部・大阪府立大学客員研究員 増井香名子(社会福祉学博士)-

「私は長らく実践者である。本研究は、DV被害者支援という実践での行き詰まりと当事者との出会いの中で、少しでもより良き支援をしたいという筆者の支援者としての思いが契機となり始めたものである。それらはまた研究を続けるエネルギーでもあった。一方で、今や研究の力に魅了された研究者である。実践に行き詰まった筆者を救い、支援を導いてくれたのは研究により見出した知の力である。」

 

 

これは、私が2019年10月に出版した著書『DV被害からの離脱・回復を支援するー被害者の「語り」にみる経験プロセス−』(ミネルヴァ書房)の「はじめに」の書き出しの一節である。

私は、自身が福祉専門職として元気に働き続けることへの危機感から大学院に入学した。それは今から12年前の話である。といっても、フルタイムで仕事をし、社会人のための長期履修制度を活用しながらなんともマイペースな研究の歩みであった。まさかそのとき自分がここまで研究にハマるとは予想していなかった。しかし、いつしかこの分野で研究を続けることやその知見を発信するという役目であるのではないかと考えるようになった。そして退職を決め、現在は大学に勤務し、研究をしている。

そう決めた背景には、二つの側面が影響している。一つは、DV被害者支援の研究が我が国において立ち遅れていることである。私が研究に出会った12年前からこの状況はほとんど変わらぬままである。そのDV研究の遅れも背景に、一向に整理されず混沌とした支援現場には、怒りにも似た感情と真摯に支援に向き合う支援者に対する心配がある。

他方は、実践と研究を知った自身の役割を俯瞰してのことである。私は長らく直接クライエントの支援を担当し、現場を走り回るソーシャルワーカーであった。おそらく1000名以上のクライエントを支援してきた。これらを一次支援と呼ぶことにする。福祉職としての後半は、所属機関のスーパーバイザー役割を担い、直接支援を行っている相談員や関係機関の職員にスーパーバイズ(助言)することや、時に面接に同席するなどもしながら間接的に支援を行う立場となってきた。これを二次支援とするなら、今の立場で行うこれからの私の役割は三次支援と思っている。

著書は、私が大阪府立大学に提出した博士論文を加筆修正したものである。DV被害を経験した当事者のインタビューデータを分析し、当事者の世界から、DV関係に陥り、そこで生き、そこからの離別を決意し、離別のための行動を起こし、生活を作り、回復していく姿を描いたものである。もちろんそれぞれの状況は個別的で多種多様であるが、それでも共通する動きが見られる。その共通点を示すことで当事者が経験する世界を理解する試みが本書である。

加えて、当事者の経験には様々に影響を与えた他者が存在する。他者の役割を丁寧にみると求められる支援が明らかになる。この研究を行う中で、再び支援現場に戻ると確かな手応えがあった。目の前にいるクライエントの世界が理解でき、共有できるようになったのである。そしてそれを同僚や関係機関の職員に伝えると理解が共有できた。
もちろん一人ができることの限界も認識している。私の周りには、法律の場で向き合う人、行政の支援者として向き合う人、民間団体で向き合う人、国会のロビー活動で向き合う人、当事者であったという経験をもとに向き合う人、様々に向き合う人がいる。いろんな向き合う(戦うといったほうがいいともいえる)人の熱に私はしばしば敬服し、脱帽する。私はおそらく研究をもとに向き合い地味に戦う人、現象に理論を見出し、知見を整理し、それを支援者にわかりやすく発信する人として、微力ながら役割を果たしていきたい。

そしてもう一点、当事者はある意味強い。これまでの多くの研究はDVがもたらす困難と被害者の脆弱な側面を示してきた。これも現実である。でもそれだけではない当事者がもつ「強さ」が確かにある。対人援助分野ではストレングスという「強み」や「強さ」に焦点を当てること、それを引き出す支援の重要性が強調されている。DV被害経験者のストレングス・「強さ」を描けたことは本書のもう一つの意味であると思っている。

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