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2021年01月28日
性差別・ジェンダー世界の女性
乘井 弥生

女性が意思決定の場にいない社会はいつまで続く? 【弁護士 乘井弥生】

■ 大事なことは男性によって決められている!

 

「202030」。この数字、どこかで目にしたことがありますか。

これは、「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標」を表す数字です。「指導的地位」とは発言力、影響力のあるポジションということ。要するに、男性が占めているさまざまな意思決定の場に女性が入ることで社会を良くしていこうという目標で、2003年、内閣府・男女共同参画推進本部が決定し国の基本計画にも掲げられた数値目標でした。

さて、2020年が終わり今年は2021年。「202030」の目標は達成できたのでしょうか? 否です。衆院議員や企業の管理職に占める女性割合は約1割にとどまり、他の分野でも目標達成にはほど遠い現状です。社会の重要な意思決定は、未だに男性(特に中高年男性)によって独占されているのです。

 

■ 女性に参政権がなかった時代の法律が生きていることの不思議

 

昨年、ある研修会の資料を作っているときに知ったことがありました。

2017年、刑法の性犯罪に関する規定の大幅改正が国会で可決・成立したのですが、実はこの改正、「110年ぶりの改正」と報じられていたのです。

110年ぶりとは、1907年(明治40年)につくられた性犯罪に関する条文が110年の時を経て大幅改正されたということ。1907年といえば、家父長制が敷かれていた時代、刑法における性犯罪の規定が「性的秩序」という視点から立法され、個人の性的自由や自己決定を侵害する罪という視点が薄かった時代、女性にだけ「姦通罪」が存在した時代です。

そして、女性に参政権はなく、100%男性により構成された国会で作られた法律が、抜本的に改訂されることなく現代に脈々と生きていて、今の私たちの権利義務や行動様式に影響している、そのことを改めて知り、驚きでした。

「男だけが集まって作った法律だって男は女のことも考えて作っているのだから、問題はないだろう」と思う人もいるかもしれません。けれども、男女によって、経験することや関心をもつ事項には大きな相違があります。重要な意思決定の場に女性がいないということは、女性が重視する問題が社会の中で取り上げられない、あるいは軽視されるということを意味しています。

 

■ 特別定額給付金の給付で見えてきたもの

 

昨年、新型コロナウイルスの関係で、政府から1人あたり10万円の給付金が出されました。この給付金、受給権者は「世帯主」となっていたため、男性を世帯主と届けている多くの家庭にあっては、男性がまとめて受け取るしくみとなっていました。

当事務所に離婚相談で来られる女性の中にも、同居中でも結婚生活が破綻していたり、別居しても住民票を異動できない事情があって、自分の分の給付金をスムーズに受け取れない人がいました。「ください」と頼んで、「くれてやる」と渋々渡された人もいます。世帯主が受給権者ですから、極端な話、夫が家族全員の分をギャンブルで浪費したとしても、法的には何ら違法とはならないのです。

「なんて男性に有利で女性に不利な仕組みなんだろう」と感じた人は少なからずいました。「家長が家族を代表して何かをする」といった家父長制的な名残りが社会の隅々に仕組みとして残っています。しかし、不便や不利益を身に染みて思うことの少ない男性がこれら古い仕組みを自発的、積極的に変えることは期待できないでしょう。

 

■ 改革のスピードアップを!

 

政府の男女共同参画会議は昨年11月、来年度からの第5次男女共同参画基本計画をつくるための「基本的な考え方」を首相に答申しました。そこでは、「指導的地位」における女性の割合を「2020年までに30%程度にする」という従来の目標を、「20年代の可能な限り早期に」とし、目標の達成が先送りされました。政府の「本気度」は全く感じられません。

改革のスピードアップを迫るのは、現状を変えたいと思う一人ひとりの日々の実践にかかっています。

 

 

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