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2021年08月26日
結婚・離婚性差別・ジェンダー
宮地 光子

夫婦別姓を認めない民法の規定を再び合憲 ~今こそ選択議定書の批准を!!  【弁護士 宮地光子】

女性に不利益な民法750条

 

夫婦別姓をめぐる2度目の最高裁大法廷の判断に、またもや期待を裏切られた。わが国において、法律婚を選ぼうとすると、夫または妻のどちらかの氏を選択しなければならない。民法750条が「夫婦は、婚姻の際の定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」と定めているからである。同条は、事実上、夫婦同氏を強制して、夫婦の一方が、これまで称してきた氏を使用する権利を放棄しない限り、婚姻することを認めない。そして、この法律の定めのもとで、96%の夫婦が、夫の氏を称する婚姻を選択している。

民法750条は、女性の側に一方的に不利益を課すものであることが、長年にわたって問題視され、平成8年には、夫婦別氏を選ぶことができるとする選択的夫婦別氏制を内容とする民法の一部改正案が法務大臣に答申されたが、国会へ提出されないままの状態が続いている。

そして本年6月23日、最高裁大法廷は、「民法750条の規定が憲法24条に違反するものでないことは、当裁判所の判例とするところであり」とする多数意見(15人中11人)に基づき、「この種の制度のあり方は、平成27年大法廷判決の指摘するとおり、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないというべきである。」として、民法750条を再び合憲と判断した。

平成27年の大法廷判決の多数意見(15名中10名)は、民法750条は、その文言上性別に基づく法的な差別的取扱いを定めているわけではなく,その規定自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではないとして、憲法14条にも憲法24条にも違反しないとした(但し、憲法に違反するとした5名の裁判官の少数意見がある)。

今回の最高裁大法廷の多数意見は、「平成27年以降にみられる女性の有業率の上昇、管理職に占める女性の割合の増加、その他の社会の変化や、いわゆる選択的夫婦別姓の導入に賛成するものの割合の増加その他の国民の意識の変化」といった諸事情を踏まえても、平成27年大法廷判決の判断を変更すべきものとは認められないとした。

 

女子差別撤廃条約に実効性をもたせるために

 

しかし今回の大法廷の決定にも、民法750条を憲法24条に違反するとする4名の裁判官の少数意見が付されている。そしてこの4名の裁判官のうち、3名の裁判官は、いずれも女子差別撤廃条約に言及していることと、我が国の夫婦同氏制のような法制度は、外国には見当たらないことに言及していることで共通している。とりわけ宮崎裕子裁判官と宇賀克也裁判官の反対意見は、5頁にわたって女子差別撤廃条約の内容と女子差別撤廃委員会による勧告の経緯に言及したうえで「我が国が女子差別撤廃条約に基づいて夫婦同氏制の法改正を要請する3度目の正式勧告を平成28年に受けたという事実は夫婦同氏制が国会の立法裁量を超えるものであることを強く推認させる。」と結論付けている。

我が国も批准している女子差別撤廃条約の16条1項は、「締約国は、婚姻及び家族関係に係るすべての事項について女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし、特に、男女の平等を基礎として次のことを確保する」とし、同項(g)において「夫及び妻の同一の個人的権利」を挙げ、その例示として、「姓を選択する権利」を明記している。宮崎裕子裁判官と宇賀克也裁判官の反対意見は、同条約16条1項に、法的拘束力があることを認めるものである。

日本は、女子差別撤廃条約を含む8つの人権条約を批准している。しかし裁判所は、人権条約の適用について、ずっと消極的な姿勢をとってきた。その一因として、日本は、人権条約を批准しても、「選択議定書」を批准していないことがあげられる。「選択議定書」は、人権条約に実効性をもたせるために国連で採択されたもので、この「選択議定書」を批准すると、批准国の個人は、自国の裁判手続きを、すべて尽くしても救済されなかった場合に、国連の各条約の委員会へ、直接、通報することが可能になる(個人通報制度)。元最高裁裁判官の泉徳治氏は、本年6月15日に開催された日弁連のシンポジウムにおいて、個人通報制度が導入されれば、裁判所の人権条約に向き合う姿勢が一変するだろうと述べておられた。

一昨年、女子差別撤廃条約の「選択議定書」の批准を目標にした共同行動のためのネットワークとして、「女性差別撤廃条約実現アクション」が結成され、「選択議定書」の批准を求める地方議会での意見書採択のための活動が、全国的に取り組まれている。大阪でも昨年から本年6月までに、すでに13の地方議会で、女子差別撤廃条約の選択議定書の批准を求める意見書が採択されているi。そして2001年以降本年6月までに、全国でみると、女子差別撤廃条約の選択議定書の批准を求める意見書を採択した地方議会の数は110に及んでいる。

裁判所の人権条約に向き合う姿勢を一変させ、司法に憲法の番人たる役割を躊躇なく発揮させるために、選択議定書の批准を何としても実現させたいものである。

 

i  2020年(9月:寝屋川市議会)2021年(3月:泉大津市議会・吹田市議会・大阪府議会・池田市議会、6月:河内長野市議会・豊中市議会・高槻市議会・大東市議会・東大阪市議会・羽曳野市議会・守口市議会・貝塚市議会)

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