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同性間の婚姻が認められないために起こっていること
日本では、婚姻は、男女間のものとされ、戸籍上の性別が同一のカップルは、法律上の婚姻をすることができません。
そのため、同性のカップルは、法律上の婚姻によって得られる法的効果や、社会生活の中で婚姻により享受できるはずの便益を得られず、著しい不利益を被っています。
たとえば、同性のパートナーは、民法上の配偶者ではないことから法定相続人に該当しないため、パートナーの死亡に際し、遺言がある等の場合を除き、財産を相続することができません。配偶者居住権の保護も受けられないため、自宅が亡くなった方の名義だった場合には、他の法定相続人が相続してしまうと、パートナーは退去を求められる危険もあります。法律上の配偶者・家族ではないため、パートナーの入院時に、病院によっては、家族として医師から病状の説明を聞いたり、面会が認められなかったりといった制限を受けることも多い状態です。また、パートナーが外国籍の場合、出入国管理法上の配偶者に該当しないため、日本では配偶者としての在留資格を得ることができません。
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日本の法律について
民法には同性間の婚姻を禁じる条文はないのですが、法務省が、「民法は同性間の婚姻を認めていない」という見解をとっているため、国や自治体では、戸籍実務において、同性間の婚姻の届出を認めないという取り扱いを行っています。ですので、同性のカップルが婚姻制度を利用できるようになるためには、民法や戸籍法等の改正が必要となります。
2021年3月17日に、札幌地方裁判所において、同性間では、婚姻によって生じる法的効果の一部すら受けられないのは、立法府の裁量の範囲を超えた差別取り扱いであるとして、現在の民法等の諸規定が、平等原則を定めた憲法14条1項に違反すると認定され、大きく報道されました。全国で、同様の裁判が係属しています。
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自治体の取り組みや海外の状況
法改正がなされないなかで、多数の自治体が、差別の解消のために、同性間のパートナーシップ制度を定めています。現在では、2021年7月の時点で、110を超える自治体で、同性間のパートナーシップ制度が導入されており、総人口の少なくとも38%をカバーしています。同様の制度の導入を検討・準備している自治体も多数あることから、同性間のパートナーシップ制度による人口カバー率は、50%に近づいていると言われています(公益社団法人Marriage For All Japanのウェブサイトhttps://www.marriageforall.jp/より)。
パートナーシップ制度は、婚姻と同一の法的効果を発生させるものではないため、その効果には限界がありますが、法改正がなされないなかで、婚姻に近い効果を生じさせるものとして、広がりが期待されています。
ただ、異性間の婚姻とは異なるものとして同性間のパートナーシップを定める制度設計は、現状ではやむを得ないものであるとしても、異性間の婚姻と同性間の婚姻が異なるものだとの印象を与えるため問題だとの指摘もあり、法改正が急務です。
多くの諸外国・地域が、同性間の婚姻制度や同性パートナーシップ制度を導入しており、ヨーロッパ、北米、中南米諸国を中心に数十か国以上に上っています。アジアでも、2017年に、台湾の裁判所で、同性間の婚姻を認めない規定は台湾の憲法に違反するとの判断がなされ、2019年5月に、同性間の婚姻を認める法律が施行されました。
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求められる法改正
日本では、国が、いまだに同性間の婚姻を認めないため、差別・偏見が助長されている面があります。
人格の根幹にかかわる性的指向を理由に、このような不利益を課せられることに合理的な根拠はありません。
私は、下記決議発出等のための実行委員の1人として、近畿弁護士会連合会(近畿圏の弁護士会のあつまり)に、「同性間の婚姻に関する法改正を求める決議」を提出し、これは、2021年11月19日に、同連合会において採択されました。この決議では、国が、法律を改正せず、このような差別的な婚姻制度が維持されていることは、人々の婚姻の自由(自己決定権)を侵害し、法の下の平等に違反するものであり、憲法13条、14条1項、並びに24条に照らし、重大な人権侵害であることを指摘し、国や国会に対し、早期の法改正を求めています。