1 養育費とは
子どもの監護に要する費用です。子どもの親権者は子の監護をする義務がありますから(民法820条)、養育費を負担する義務がありますし、離婚によって親権者ではなくなった親にも、子どもに対する扶養義務があります(民法877条1項)。つまり、親権の有無にかかわらず、親には子どもの養育費を分担すべき法的な義務があるのです。そして、この義務は、婚姻費用と同じように、「生活保持義務」と言って、扶養義務者である親と同等の生活水準を被扶養者である子どもにも保障すべきものです。
民法には、「父母が離婚するときは、子の監護に関する費用の分担について協議で定める」という定めがあり(766条1項)、協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、家庭裁判所に調停または審判の申し立てをすることができます。
2 離婚相談でよく出る質問
養育費は何歳まで請求できるのか、金額はどれくらい請求できるものなのか、一度決まった養育費はずっとその金額のままなのか、養育費の支払いが止まってしまうことがあるとよく聞くので、それなら一括で支払って欲しいがそれは可能か、という質問を受けることがよくあります。
まず、養育費は何歳まで支払ってもらえるのか、という点については、民法の改正で成人年齢が18歳に引き下げられたことが影響してか、義務者側から、支払い終期を「18歳まで」と主張されることが多くなりました。しかし、養育費は、「未成年者」に対してではなく、「未成熟子」に対して支払うものです。18歳に達したからと言って、急に経済的に自立できる状態になっているかと言えば、現実はそうでないことがほとんどでしょう。扶養される必要がある状態が続く以上、義務者は養育費の支払い義務を免れることはできません。
では、養育費の金額はどれくらい請求できるのか、という点ですが、義務者が毎月いくら負担するのが適切か、その目安となるのが家庭裁判所の調停や審判、離婚訴訟の実務で採用されている「算定表」で、私たち弁護士は、この算定表をもとに、義務者(養育費を支払う親)の収入と権利者(受け取る方の親)の収入を考慮した大体の金額を算出して、ケースごとに具体的な額をお伝えしています。
3 消滅時効にご注意を
いったん決まった養育費も、義務者や権利者の経済事情や生活状況、子どもの年齢が変わること等によって、増額されたり減額されることがあります。
また、義務者と権利者の間で一括払いの合意ができれば、一括で受け取ることはできますが、このような合意ができることは、むしろ稀です。
養育費は、一般的には、定期金債権と言って、定期的に一定の金銭の支払いを目的とする債権です。月ごとに支払い請求権が発生するものですから、毎月の養育費は個々に債権として発生し、それぞれが定期給付債権となるため、消滅時効があり、注意が必要です。支払いが止まったときに差し押さえなどの法的手段をとっておかないと、5年の消滅時効にかかり(民法169条)、請求権を失ってしまうことになります(ただし、既に弁済期、つまり債務を履行するべき時期の到来した過去の養育費債権について、確定判決、審判、裁判所の和解、調停等確定判決と同じ効力を持つものによって確定した場合には、消滅時効の期間は10年です)。
養育費の支払い確保のための具体的方策については、弁護士にご相談ください。