「特例貸付」とは
特例貸付とは、公的な貸付事業(財源は国や都道府県の補助金)の1つで、実施主体は、各都道府県の社会福祉協議会(社協)です。これまでもあった生活福祉資金貸付の「特例」として、新型コロナウイルス感染拡大の影響による収入の減少等への対策のために、2020年3月25日から受付が開始されました。いずれも無利子で、最初の緊急事態宣言よりも早い時期から開始されています。
最初は、「緊急小口資金」として、最大20万円(1回)の貸付が実施され、その後に、「総合支援資金」として、1月分20万円×3か月(最大60万円)の貸付が実施されました。この総合支援金の受付期間は、2020年7月末までの予定でしたが、受付期間が延長され続け、2022年9月末日をもって終了しました。
ですが、わずか20万円×3か月間の貸付では、生活を立て直すことができない世帯が多くなったため、2020年7月には、上記に追加して、総合支援資金を、さらに20万円×3か月(最大60万円)貸し付ける「延長貸付」が創設されました。加えて、2021年2月には、緊急小口資金と上記合計6か月分の総合支援資金の利用が終了した世帯を対象に、さらに20万円×3か月分を追加貸付する「再貸付」の制度が導入されました(更なる追加分最大60万円)。
上記特例貸付の1世帯当たり最大の貸付額は、合計200万円になります。特例貸付に際しては、それまでの生活福祉資金に比して、貸付審査も大幅に簡略化され、申込から貸付実行までの迅速化が図られました。
利用状況と償還(返済)について
現在では、特例貸付の累計貸付決定件数は330万件以上、貸付決定額は約1兆4000億円にのぼっています。
未曽有のコロナ禍で、急激な生活困窮に曝された世帯の多さがうかがわれますし、社協も、これまでにない非常に多くの貸付の実施や、度重なる「延長」等に、迅速に対応する必要に迫られました。
貸付審査が簡略化されたことで、速やかに貸付を利用できた一方で、それまでのように、社協が利用者から生活状況等を聞き取り、他の制度の利用の促進等を含め、伴走的な支援を行うことは難しくなりました。
今回のコロナ禍における特例貸付については、住民税非課税世帯は償還免除(返済不要)とする方針が、事前に示されました。そのことにより、貸付を受ける際に、返済に追われる不安はある程度軽減されたと思われます。ただ、住民税の課税最低額は低く、この免除要件だけでは、かなり多くの世帯がいずれは返済の必要に迫られます。
しかし、景気の回復や、特例貸付の利用世帯の生活状況の確認調査等もないまま、政府の方針により、特例貸付の償還(返済)が2023年1月から段階的に開始します。
返済額について
2023年1月からは、緊急小口資金貸付の返済(月額約8300円×24回)と、総合支援金(最初の60万円)の返済(月額5000円×120回)が始まり、2024年1月からは、総合支援金の延長(60万円)の返済(月額5000円×120回)が、さらに、2025年1月からは、再貸付(60万円)の返済(月額5000円×120回)が追加されます。
すべてを利用している世帯であれば、2023年1月から毎月1万3300円の返済が求められ、2024年1月からは返済額が毎月1万8300円になります(返済の終了に伴い、2025年1月からは月額1万5000円になり、以降、順次、返済額が減っていきます)。すべての返済が終了するのは、2034年末です。
当初から予定されていたとおり、住民税非課税世帯は償還免除となりますが、住民税の課税をぎりぎり受ける収入であれば、概ね生活保護基準額の水準だと言われています。例えば、ひとり親世帯や高齢者世帯、非正規雇用で就労している世帯等にとっては、上記の返済額を長期間に渡り、生活費を削って捻出することは非常に困難です。
免除について
加えて、今回の償還免除は、特例貸付の債務をすべて一括で免除するものではありません。返済が始まる時点で、緊急小口資金と総合支援金(最初の60万円。非課税の対象年度は2021年度と2022年度)の免除審査を、次年度に延長(非課税の対象年度は2023年度)の免除審査を、次々年度に再貸付(非課税の対象年度は2024年度)の免除審査をと、3年に分けて償還免除の決定がなされます。当然、そのたびに償還免除の申請が必要となりますし、いずれかの年度で住民税が非課税でなくなれば、対象となる貸付については返済が必要になります。
返済に耐えられないと考えれば、非課税限度額を上回らないように収入を抑制して就労をせざるを得ない場合も出て来るでしょうから、政府によるこうした制度設計は、生活の改善を遅らせることにもつながりかねません。
大阪弁護士会の無料相談のご利用を!
2023年1月に、非常に多くの世帯で上記の返済が開始されるため、大阪弁護士会では特別に、特例貸付を含む借金(コロナ禍での借金)について、初回相談は無料での相談を受け付けます(要件を満たす方は、法テラスの利用も可能です)。
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