面会交流とは
私は、離婚やひとり親に関する講義の依頼を受けることがありますが、中でも聴講者の方が関心をもって聞いてくださるのは「面会交流」の問題です。質疑応答でも面会交流に関して質問されることがよくあります。面会交流とは、子どもを監護していない親が子どもと会ったり、手紙や電話で交流することをいいます。民法第766条第1項に、父母が離婚をするときには「父又は母と子との面会及びその他の交流」について定めると規定があり、その際には「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」とされています。
未成年の子がいる場合に協議することとして、「養育費」の問題がありますが、養育費は裁判所が公表している算定表を用いて決めることが多く、離婚する父母の収入から一定の基準を出すことが比較的容易です。しかし、面会交流は、子どもの年齢やこれまでの親との関係性、子の意思、子の現在の生活状況などから、その内容が変わってくるので、一定の基準を設けることが困難です。
また、DVやモラル・ハラスメントがあったケースなどでは、面会交流を実施することが望ましくない場合もあります。日本乳幼児精神保健学会では、面会交流自体が離別後の虐待継続の機会となり、子どもが安全安心を得られなくなったり、同居親が危険や紛争のストレスから子育ての余裕を失い、子の教育の質を損なうという指摘がされています。
支援団体の利用
父母が高葛藤の事案で面会交流を実施する場合、面会交流を支援する団体(以下、「面会交流支援団体」といいます)を利用することがあります。面会交流支援団体とは、父母からの申込みがあった場合に、①父母間の連絡調整支援(具体的な日時や場所等を決めるための連絡を代わりに行う)、②子の受渡し支援(面会交流をする際に子どもの受渡しを代わりに行う)、③見守り支援(面会交流の場に付き添い、面会交流を見守る)などの支援を行う民間の団体です。
法務省のホームページには面会交流支援団体の一覧表があります(注i)が、面会交流支援団体は民間の団体であり、公的機関が運営するものではありません。面会交流支援団体の活動について直接規定した法令はなく、面会交流支援団体の個々の努力によって支援の在り方が模索されているのが現状です。
面会交流支援団体のニーズは高く、利用希望が多いため、面会交流支援団体によっては期間の制限を設けており、長期的に支援してもらうことが難しいという問題があります(注ii)。また、利用費用も各団体によってまちまちであり、見守り支援(面会交流に付き添ってもらう)を希望する場合、1回につき1万円~2万円程度はかかるため、利用料の点から利用をためらう方も多いようです。
イギリスの制度
イギリスでは、父母が高葛藤の場合に面会交流の援助機関(子ども交流センター)を活用することができ、同センターはイギリス全国に350ほどあります。そして、同センターの安全性など質の確保はNACCCという認証機関が行っています。子ども交流センターは、一般的な支援センターとDVやドラッグ、アルコール、精神疾患など深刻な問題を抱えるリスクのあるケースを扱う交流センターに分かれています。
後者のセンターは有資格者のソーシャルワーカーのスタッフによって運営されており、認証基準も異なります。深刻な問題のあるケースでは裁判所がセンターに依頼をし、センターの監督下で交流が行われ、DV加害者プログラムなどが実施されます。センターは、裁判所に進捗を報告し、センターと裁判所が連携して面会交流をサポートします(注iii)。
日本における認証制度の開始
日本においても、昨年10月、面会交流支援団体について一定の基準を元に支援団体の質を保証し、支援団体が拡大することを目指して民間団体が認証制度を始めました。認証制度を作ったのは、「面会交流支援全国協会(AccsJapan)」です。ACCSJは、面会交流支援にかかわる人々や、法学、児童精神科医、臨床心理士などの専門家で構成されており、面会交流支援のモデルとなる諸規則、支援内容や手続き、習得すべき諸基準の構築に向けた活動を行っています。
ACCSJのホームページでは、面会交流の支援マニュアルや面会交流支援における安全の確保に関するガイドラインが掲載されています。また、複数の面会交流支援団体に対して、アンケートを実施し、家庭裁判所の調停調書や審判決定、弁護士による合意書などで面会交流支援団体の利用をする場合、記載事項など配慮することについても示しており、参考になります(注iv)。
今後、認証制度が拡大するのか、関心があります。イギリスのように、支援団体が増え、裁判所と連携を取りながら支援団体を利用することができるようになれば良いと思います。
i https://www.moj.go.jp/content/001385253.pdf
ii 大阪で面会交流を支援する大阪ファミリー相談室(通称FPICエフピック)では、支援の期間は原則として初回の面会交流日から1年間としており、特段の事情があると判断された場合に限り、1回の期間更新を認めている。
iii 面会交流支援全国協会「子どものための面会交流支援~イギリスから学ぶ~」報告書
https://accsjapan.com/report_files/ACCSJ_Report1_web.pdf
iv AccsJapanホームページ https://www.accsjapan.com/index.php?page=s-top