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2023年08月07日
結婚・離婚子ども面会・養育費
髙坂 明奈

共同養育? 共同親権?  離婚後の家族のあり方について 【弁護士 髙坂明奈】

今年4月、離婚後の子どもの養育について検討する法制審議会(法務大臣の諮問機関)の家族法制部会が、「共同親権」を導入する方向で議論を進める見通しであると報道されました。父母の真摯な合意が確認された場合は、「共同親権」を選べるようにすることが基本方針のようです。また、同年6月には、裁判で離婚する父母間で意見が対立した場合、裁判所が単独親権か共同親権かを決定できるようにするとの考え方を法務省が示したということです。

 

〈共同親権を推進する立場〉

 

現行民法には、第819条第1項に「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。」、第2項に「裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。」と規定があります。すなわち、未成年の子がいる場合、離婚時には、父母どちらを親権者とするかを決めないと離婚は成立しません。

離婚後も共同親権とすることを推進する立場からは、単独親権制が夫婦間での子どもの取り合いを招き、離婚紛争が激化している、離婚後も共同親権とすることで面会交流が促進され、養育費の支払いが促進されるといった主張がされています。

 

〈共同親権の導入に慎重な立場〉

 

昨年12月、「家族法制の見直しに関する中間試案」に関する意見(パブリックコメント)が募集されましたが、私は反対の意見を表明しました。

離婚後、父母が協力して子を共同養育することに反対するわけではありません。「共同養育」は現行法でも可能ですし、離婚後も関係が良好で、父母間で意思疎通が図れ、子のためにいろいろなことを相談して意思決定ができる者は、法改正を待たなくても協議を行うことができているのが現状です。法改正をして「共同親権」を求めているのは、離婚した父母の関係が悪く、協力して親権行使ができない家族で、子に関わりたいと求める別居親が主ではないでしょうか。

離婚は父母がもはや共同生活を維持できないほどに協力関係が破綻した末に選択される法的手続ですから、多くの場合、離婚時において父母間の信頼関係は失われています。そのため、子どもに関する決定を、子どもの福祉に適うよう父母の共同の意思のもとに行うということは難しく、共同親権制度は、法によって、無理を強いることで、子や同居親を不安にさせ、監護の安定性を害することになると思います。

共同親権になれば子の取り合いを招かないかというと、そういう問題でもありません。結局、監護権者は誰かを決める必要がありますので、監護権者を決定する争いにシフトするだけです。

最も懸念するのは、DVや虐待があるケースで共同親権が導入されてしまわないかということです。親権者は「居所指定権」を有することになりますので、DV被害者が身を隠すことができなくなってしまいます。

父母間で真摯な同意があった場合に共同親権を採用できるようにしても、DVや虐待があるケースを排除しきれるでしょうか。早く離婚したい一心で、あるいは脅されて共同親権に同意してしまうような人が出てくるおそれがあります。

 

〈離婚後の家族のあり方〉

 

離婚後に子が複雑な思いを抱えていることは事実です。子どもが安心して生活するには、共同親権制度を導入することよりも、子どもの声を聞き取るような第三者機関を設けることの方が重要です。

法制審議会では、「親権」を「親責任」「親義務」「親債務」などの用語に変更することも議論されています。親権は「子に対する親の支配権」ではなく、「子の利益のために」行使されるものです。共同親権の導入ありきの議論ではなく、本当に子の利益になる議論を進めて欲しいと思います。

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