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2023年08月07日
平和・人権本の紹介
角崎 恭子

『差別の哲学入門』を読んで 【弁護士 角崎恭子】

「特徴に基づいて不利益を与える区別」

 

私たちは、日常生活の中でさまざまな差別に出合います。女性であれば、「女に○○はできない」「女なのだから○○しろ」「女のくせに○○で生意気だ」等と言われ、選択肢や可能性が狭められたり、不本意な行動を選ばされたり、気持ちを傷つけられたりといった形で、差別を経験しているのではないかと思います。

「差別とは何か」「差別はなぜ悪いのか」「差別は、なぜ、なくならないのか」といったことを改めて考えるために、『差別の哲学入門』(シリーズ・思考の道先案内1 池田喬・堀田義太郎著 アルパカ合同会社、2021年)を読みました。

本書では、差別を「特徴に基づいて不利益を与える区別」と一応の定義をし、アファーマティブ・アクションやヘイト・スピーチ、セクハラ、いじめ等が、どのように差別としての面を持つかを考察しています。

例えば、アファーマティブ・アクションは、よく逆差別だと非難されますが、本書では、現在進行している差別(逆差別)ではなく、「過去の差別への補償」「未来の多様性の確保」であって、典型的な差別とは区別されるべきと説明され、考えるための道標を得られます。

アファーマティブ・アクションに似たものとして、最近、槍玉にあげられることの多い女性専用車両の正当性についても、「現在の機会平等」の確保を論拠に、1つの差別の歴史的・社会的文脈(例えば、女性を性的な消費対象として捉え、痴漢加害の前提になる考え方や見方が共有されていること等)を問うという手法で、具体的に考えられるよう導かれています。

 

代表的な4つの考え方

 

差別がなぜ悪いのかについては、代表的な4つの考え方が示されています。

1つ目は、差別をする者の心中に、敵意や侮辱・蔑視があり、相手を対等な人格として尊重しないことを問題とします。ただ、これは、「意図(自覚)していなければ良いのか」という疑問を生みます。

2つ目は、差別は、害(差別される人の状態を悪化させること)を与えるものと定義し、害の内容を分析します。

3つ目は、差別を「自由を侵害するもの」と捉え、行動を選択する自由を奪われ、否定的な視線に曝されることで、(その人の状態が悪化することは無くても)自分で決める自由が奪われれば、それは差別であると説明します。

最後に、差別とは、被差別者を貶めるような社会的意味を持つ行為(発言や行動のパターン)、すなわち「他者を対等な人格として尊重しない行為」であり、人種や性別等の特徴によって他者を「劣位」に置くことが差別の悪質さだと指摘します。

本書では、この4つの考え方について、理解しやすい問題と取りこぼしやすい問題を検討し、差別がなぜ悪いのかという論点に迫ります。

 

差別とわかりにくい「マイクロアグレッション

 

さらに、悪いと分かっているのになぜ差別がなくならないのかが考察され、配慮しているつもりで差別をしてしまう「マイクロアグレッション(微細な攻撃)」が紹介されています。

マイクロアグレッションは、歴史的背景や現実に既に存在している差別を軽視することで、それまで差別されてきた人に対して、その人が生きてきた現実を蔑ろにしてしまう、一見、差別とは分かりにくいさまざまな言動を指します。

例えば、上司から、部下の女性が、「あなたは女性だけど自分は気にしない。今後は、男性と全く同様の仕事を与えるつもりです」と言われたら、どうでしょう。見かけは公平な言葉のようですが、家族からの協力が得られず、育児や家庭責任を担わされ、男性の同期よりも昇進が遅く、賃金も低く、研修を受ける機会も少なかったとしたら、その女性は、対応できずに打ちひしがれてしまうかもしれません。現状では、この発言は、「攻撃」になってしまう可能性がある訳です。

この本は、自分が差別をしていないか、自分の言動を顧みる上でもヒントを与えてくれますし、考えるための言葉を与えてくれますので、紹介させていただきました。

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