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2023年08月07日
結婚・離婚DV
有村 とく子

オンライン学習会「DV加害者と虐待  ~DVは子どもを苦しめる『受動虐待』」~を視聴して 【弁護士 有村とく子】

DVをなくしジェンダー平等社会を目指す「アウェア」は、DV被害者支援のための加害者更正プログラムの取組を地道に続けてこられた民間の団体です。先日、そのアウェアと「DV加害者更生教育プログラム全国ネットワーク(PREP-Japan)」の共催による、ランディ・バンクロフト氏の講演会(オンライン学習会)を視聴しました。

ランディ・バンクロフト氏は、米国でDV加害者専門カウンセラー、臨床スーパーバイザー、監護権評定者、子ども虐待調査官などを歴任し、これまで1,000人以上の加害者に対して直接、加害者プログラムを行ってきました。一貫してDV被害者支援のための加害者プログラムを行ってきた人です。

ランディさんのお話はまず、DVの本質は当事者の関係性の問題であり、ひとつひとつの行為についてこれはDVかどうかと判断するものではないこと、加害者の根底にあるのは怒り等の感情ではなく、「自分と親密な関係になった相手は自分の思う通りに動くべきだ」という考え方や価値観である、というところから始まり、一気に引き込まれました。

DV加害者は、自分の感情をコントロールできずに暴力を振るうのではなく、怒りのコントロールにはむしろ長けている。社会的には良く適応しており倫理観も共感能力も思いやりもあり、ユーモアも持ち合わせているが、こと親密な関係性の中では相手を見下し、「相手は自分の言うことに従って当然である」という特権意識を持っている。相手への暴力(虐待)をやめられないのではなく、「力と支配」を失いたくないがゆえに暴力(虐待)をやめないという行動を選択的、意識的、自覚的に行っているのだと指摘します。

また、加害者は嘘をつくのが上手く、子どもには被害者(多くは母親)のことを悪しざまに言いつのって、母への敬意を失わせます。子どもは母親が父親から日常的・常習的な暴力(虐待)を受けている様子を見たり聞いたりする、つまり、DVにさらされることによって、混乱し、不安になり、苦しみ、心を傷付けられます。DVは子どもを苦しめる「受動虐待」であると言われる所以です。

さらに、加害者は家庭の外の第三者に対しては良識のある人として振る舞うので、第三者は家庭内で妻にDVをしている人物とはとても思えず、妻側に問題があるかのように思ってしまいます。

妻も最初は加害者の言動に異を唱えますが、そうすると加害者から激烈な攻撃が代償として返ってくるため、力を失って何も言えなくなっていくというプロセスをたどります。

私たちは、日頃DV相談を受ける中で、夫から何時間にもわたって説教をされるので、根負けしてしまい自分の意に沿わないことでも夫の言うことに従うことが多いという話をよく耳にします。ランディさんのこの説明は大いに頷けるものでした。

その上で、あるべき加害者プログラムとは、DV加害者の話を聞いてその感情を理解しようとするのではなく(セラピーではなく)、「学びと訓練」の場であると言われたのも、その通りだと思いました。

加害者はそう簡単には変わらない。加害者のプログラム中の発言や態度でもって「加害者が変わった」と判断してはならない。加害者が自ら選択して虐待をしたことを全て認め、被害者を対等なひとりの人として尊重する考え方を習得し、それに基づいた態度・行動を取れるようになり、被害者の傷つきや苦痛に共感することができることが最低限必要である、とします。

加害者がそのように変わるのは難しく、年単位の時間がかかるとのことでした。加害者の自発的な受講は到底期待できません。だからこそ、受講を強制する公的介入の仕組みが必要なのでしょう。

今回の改正DV防止法でも、条文には取り上げられなかったものの、被害者支援のための「DV加害者更正プログラム」の有効性と公的な枠組みの必要性は、内閣府(男女共同参画局)においても認知されているようです。

このオンライン学習会でランディさんのお話を聞いて、実際に加害者更正プログラムが全国的に導入されるようになるまでには専門的な知識をもったプログラム実施担当者の育成をはじめ、時間と労力と財政面での国や自治体のバックアップが不可欠だと思いました。

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