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ニュースレター

2024年01月16日
性差別・ジェンダー
雪田 樹理

「女性支援法」の施行に向けて  弁護士 雪田 樹理

2022年夏発行のニュースレターで、「女性支援法」が成立したことを報告しました。法律の正式名称は「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」で、いよいよ今年4月1日に施行されますので、現状についてご報告します。
この法律に基づいて、2023年3月29日、厚生労働大臣から国の基本方針が公示されました。現在は4月1日の施行に向け、各都道府県が基本計画を策定しているところです。
都道府県には基本計画の策定義務がありますが、市町村は努力義務となっているため、市町村の取組みには濃淡があるのが現実で、議論すらまだなされていない自治体や議会もあるようです。また、メディアを含めた社会全体の関心の低さがとても気になっています。
大阪では、大阪府が、昨年夏から社会福祉審議会女性支援専門分科会で、「大阪府困難な問題を抱える女性への支援のための施策の実施に関する基本的な計画」づくりの議論が進められています。また、大阪市でも市民局が「困難な問題を抱える女性への支援に関する有識者会議」を開き、基本計画策定に関する有識者からの意見聴取をしています。私もその一員として会議に参加しています。いずれも市民からのパブリックコメントを経て、4月1日の法施行にあわせて基本計画が策定されるものと思われます。

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ところで、「女性支援法」が定める「困難な問題を抱える女性」とは、「性的な被害、家庭の状況、地域社会との関係性その他の様々な事情により、日常生活又は社会生活を円滑に営む上で困難な問題を抱える女性(そのおそれのある女性を含む)」とされています。そして「女性支援法」は、困難な問題を抱える女性の福祉の増進を図るために、女性への支援のための施策を推進し、もって人権が尊重され、女性が安心して、かつ自立して暮らせる社会を実現することを目的としています。
人権の尊重や男女平等を掲げた日本国憲法が制定されて78年目にして、日本で初めての女性福祉に関する法律です。これほどまでに日本では女性福祉の分野が遅れており、いまだにシステムとして確立されておらず、しかも社会の関心が低いというのが現実です。

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「女性支援法」では、女性支援に関する中核的な機関として、都道府県等が設置する女性相談支援センター、女性相談支援員、女性自立支援施設の三機関が設けられており、それらの日常的な連携が求められ、また民間団体との協働、各関係機関の支援調整会議という制度が新たに設けられることになっています。
その中でも重要なのは、身近に相談できる女性相談支援員の十分な配置だと考えています。国の基本方針は、都道府県の女性相談支援員について、「支援対象者が適切な支援を受けられるよう、丁寧なヒアリングによるアセスメントを行い、支援対象者の意思決定を支援し、必要に応じて関係機関と連絡調整を行う」とし、市町村等の女性相談支援員は、「支援対象者にとって最も身近に相談できる支援機関に属する者として、支援への入り口の役割を果たすとともに、支援対象者に寄り添いながら、支援に必要となりうる児童福祉、母子福祉、障害者福祉、高齢者福祉、生活困窮者支援、生活保護等の制度の実施機関と連携して、本人のニーズに照らし、戸籍や住民票の発行、転出入手続き、各種手当の受給に係る手続き、公営住宅への入居、児童の養育に関する支援、各種福祉サービスの調整等のコーディネート及び同行支援を行い、関係部署と連携して支援対象者を適切な支援につなげる役割を有し、継続した支援を行うもの」としています。
このように女性相談支援員は、市町村において、庁内の関係各部署との調整や連携を行う役割を担うため、庁内全体でその役割がきちんと位置付けられ、職務をスムーズに行うための権限も与えられることが必要となります。

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しかし、法律では、市町村における女性相談支援員の配置は努力義務となっているため、市町村における女性相談支援員の配置を求める声を上げていかなければなりません。
大阪弁護士会では、2023年7月27日、大阪府内の全市町村に女性相談支援員を複数配置することや、大阪府女性相談センターの職員を増員し、市町村の女性相談支援員のスーパーバイズや研修等に専属で従事できるようにすること、十分な知識と経験を備えた福祉専門職を女性相談支援員に配置し、その待遇を改善することなどを求める意見書を大阪府と府内市町村長に発しました。
女性相談支援員(売春防止法上の旧婦人相談員)は、現状では全国で1600人ほどしかおらず、その8割以上が非常勤で、低賃金であるため、在職年数も半数近くが3年未満です。
女性相談支援員が、長期かつ安定的に、専門性を発揮して働くことができる雇用形態とその仕事に見合った正当な報酬体系を整備し、専門性の高い人材を育成していくこと、そのための予算をつけることが差し迫った課題です。女性福祉の現場は、これまで法律すらなかったためか、人員不足が叫ばれている児童や高齢・障害等の他の福祉分野よりも一層人的物的資源が不足しています。
「女性支援法」の理念を着実なものとして社会に定着させ、人権が尊重される社会を実現するためには、政治も社会も「女性支援法」の大切さをもっと理解してほしいと思います。

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