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2024年01月16日
相続子ども
角崎 恭子

相続放棄について  弁護士 角崎 恭子

相続放棄とは、相続人が、被相続人(亡くなった方)の残した財産も債務も放棄し、引き継がないための制度です。
相続人が全員相続放棄をすると、特別縁故者がいない限り、財産が残った場合は全て国のものになり、債務だけが残った場合は、債務者の死亡と共に債務が消滅します。ただ、相続人が、被相続人の債務の連帯保証人等になっていれば、契約上の債務は残ります。
相続放棄は、被相続人の死亡を知ったときから3カ月以内に、家庭裁判所で手続きをする必要がありますが、3カ月では財産等の調査ができない場合は、家庭裁判所に、相続放棄期間の伸長を申し出ることもできます。
相続財産の全部または一部を処分した場合は、相続について「単純承認」をしたものと扱われ、相続放棄できなくなります。処分というのは、被相続人の預金を引き出して使用したり、保険を解約して、解約返戻金を受領したりすること等を言います。
被相続人の入院費用等は、被相続人の預貯金等から支払いたいところですが、被相続人の死後にそのようなことをすれば、相続を承認したものとされ、相続放棄ができなくなりますので、ご注意ください。
相続放棄の期間は「被相続人の死亡を知ったときから3カ月」です
通常、近しい人が亡くなった場合は、家族等からすぐに連絡を受けると思います。ですが、完全に人間関係が途絶えてしまった人が亡くなると、知らないまま月日が経ってしまうこともあります。
役所等からの通知等で知る方もいますが、これは、役所が親切で教えてくれる訳ではなく、被相続人に、税金や国民健康保険料の未納がある場合等に請求の形で連絡が届くことが多いです。
驚きの返還請求
幼い子どもの親権者を母と定めて離婚し、数年経過してから父が亡くなったケースがありました。その父は、離婚の前後に、本来受給できない児童手当を受給したことで、自治体から返還請求を受けていたにもかかわらず、返還せずに亡くなりました。
自治体は、人が亡くなっても、相続人に対して返還請求を続けますので、子ども(当時まだ未就学児)宛てに、返還請求書が届いたのです。請求書には、「児童手当資格喪失処分及び児童手当返還金決定に伴い、過払いによる○円の返還金が生じました。自治体は、相続人に対して、法定相続分にしたがって、履行を請求します。」といったことが記載されているだけで、相続放棄についてのアドバイス等はありません。
受け取った母は、子ども自身が不正受給に問われているのかと驚いて相談に来られ、事なきを得ましたが、もし、よく分からずに放置してしまえば、子どもは相続放棄ができなくなり、父のその他の債務等も背負うことになったかもしれません。
こういった自治体等からの通知は、しっかり内容をご確認いただくと共に、速やかに相続放棄等の対応をしなくてはなりませんし、放置すると、相続放棄ができなくなりますので、注意が必要です。
相続放棄がなされると、次順位の人が相続人に
相続放棄をすると、その人は初めから相続人ではなかった(存在しなかった)ことになり、法定の相続順位に従い相続人が変更されていきます。
例えば、夫婦に子がいて、その子にはさらに子(孫)がいた場合に、夫が亡くなり、妻と子が相続放棄をすると、妻子は初めからいなかったものと扱われ、孫ではなく、亡夫の両親が相続人になります。
夫よりも子が先に亡くなっていた場合は、代襲相続が発生して、孫が相続人となりますが、子が相続放棄をして、初めからいなかったものと扱われると、孫は相続人にはならないのです。
相続放棄をしても受け取ることができるもの(未支給年金や一部の保険金等)
被相続人が年金を受給している場合、年金は、偶数月に前月分と前々月分が振り込まれるため、受給日後、亡くなるまでの間の年金が未支給の状態で残ります。
未支給年金は相続財産ではなく、遺族の固有の財産とされていますので、相続放棄をする場合でも、受け取って差し支えありません。ただ、被相続人の生前、生計を一にしていたという要件がありますので、誰も受け取ることができない場合もあります。
また、お葬式での参列者からのお香典・御霊前等も、遺族に対する弔意を表すものですので、相続財産ではありません。
他に、生命保険金についても、よく質問を受けます。インターネット上では、「相続放棄をしても、生命保険金は受け取っても大丈夫。」等と説明してありますが、保険金の性質によっては、これも、注意が必要です。
例えば、被相続人が、自分が亡くなったときのために、自分で生命保険を契約して保険料を支払い、その保険契約のなかで、子を生命保険金の受取人と指定していれば、生命保険金は、契約上発生した受取人である子自身の財産ですので、子は、相続放棄をする場合でも受け取って差し支えありません。
ですが、被相続人が、自分の入院や手術等で高額な医療費がかかったときのために、自分で入院保険等を契約して、保険料を支払い、保険金の請求人も被相続人自身と指定していた場合は、保険金は、被相続人の財産(相続の対象となる財産)ですので、遺族は、相続放棄をする場合は、受け取ることはできません。
相続放棄について、わからないことがありましたら、お気軽にご相談ください。

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