92年「女性の人権を守り、男女平等社会の実現をめざす」を目標にウィメンズネット・こうべを発足。94年、一軒家を借り「女たちの家」を開設すると、夫の暴力に悩む女性たちが次々駆け込んできた。DVという概念もシェルターという言葉も知らなかったが、駆け込み寺も活動の一つになるのかと思った。翌年1月17日に震災があり「女たちの家」も被災。女性支援ネットワークをたちあげ、被災女性の支援に取り組んだことがきっかけで、DV被害女性支援が当団体のメインの活動となった。04年には民間シェルター「ともだちの家」を開設し、今日まで約500世帯を受け入れた。活動を通して、母子ともに心の傷が深いこと、その後の貧困や孤立を知り、2013年に神戸市内にWACCA(わっか)を開設。DV被害女性や子どもの心の回復と生活再建に向けた中長期支援を行う。
2004年のシェルター開設以来、女性たちのその後の家探しも支援活動の一つになった。しかし、保証人なし、所持金も乏しい、しかも子連れという女性たちに紹介される家は、狭い、古い、日当たりも悪い。「ここにしか住めないのか」とため息がでるような家が多かった。2010年、居住福祉を考える研究者とともに訪問したデンマークで、母子が住む家を見学した。外観は古いが、内部はデザイナーズマンションか!と思うほど美しく、広いリビング、保育ルーム、キッチン、家具は木製で温かい雰囲気だった。困難を抱える女性や母子が「ここにしか住めない」ではなく「ここに住みたい」と思える住まいをつくりたいと強く思った。帰国後、「夢のウィメンズハウスをつくろう!」とチラシをあちこちで配った。2019年に住宅取得が困難な女性を対象に居住支援事業を始めた。1年目40件、2年目78件、その後は毎年100件を超える相談や同行支援に無料で対応した。多くがDV被害女性や親からの虐待に苦しむ若年女性たちで「こんな支援が欲しかった」と言われた。2023年の国の調査では既婚女性の4人に一人がDVを経験し、DVを経験した者のうち、6人に一人が生命の危険を感じるほどの暴力を経験、面前DVは子どもへの虐待だが、経済的不安や住まいの確保ができない等を理由に、被害女性の10人に一人程度しか別れていない。1994年のイギリスでは、DV被害女性が警察等にSOSをだせば、住宅を提供することが各自治体の責務とされていた。屋根のある家に住んでいても、安心・安全が奪われている人はホームレスと見なされるからだ。欧州では「全ての人に、安心・安全で快適な住まいを得る権利―ハウジングライツ―がある」ことが思想として定着しているそうだ(日本では住まいは自己責任、男の甲斐性とされる)。住まいの提供と同時に、経済的支援と母子ともにカウンセリングも提供される。日本の場合、加害者は処罰されず、被害者である女性たちが仕事もコミュニティも捨て、子連れで遠隔地に引っ越すというケースも多い。その後、孤立と貧困に苦しんでいる場合が少なくない。「私たちは暴力か貧困しか選べないのでしょうか」という言葉が忘れられない。
六甲ウィメンズハウスは、個室が40室、キッズルーム、カフェ、女性のための学習室、シェアオフィスもある。これまでの当団体の支援の経験や他機関との連携を活かし、心のケアや生活再建を応援したい。国交省の補助金審査会で「NPOと企業が連携して社会貢献の建物を創ること自体、日本ではまだまだ少ない。しかもジェンダー視点のある事業でこれだけの規模のものは日本で初めて。全国各地のモデルになって欲しい」と言われた。困難女性支援法は2024年から施行されている。DV被害に苦しむ女性や母子への住まいの提供が国の施策となることを願ってやまない。
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振込み口座 三井住友銀行 須磨支店(普通)3966425
名義人 NPO法人女性と子ども支援センターウィメンズネットこうべ
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入居については、090-8196-1702までお問い合わせください。