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2024年08月05日
子ども性被害・セクハラ
雪田 樹理

子ども性暴力防止法――「日本版DBS」とは? 弁護士 雪田 樹理

性犯罪歴を照会・確認する

イギリスの犯罪歴照会制度の実施機関DBS(Disclosure and Barring Service 前歴開示・前歴者就業制度機構)にちなんで「日本版DBS」といわれる児童対象性暴力防止法(「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」)が、今国会で成立しました。今後、運用のガイドラインが策定され、2年後を目処に施行されます。

イギリスのDBSチェック制度は、子どもだけではなく、高齢者や病気・障害のある成人と接する仕事も含め、特定の犯罪歴のある人が就業できないようにして、子どもや脆弱な大人を守るという仕組みで、働くことを希望する人は、ボランティアも含め、DBSから発行される無犯罪証明書が必要になる制度です。

では、「日本版DBS」はどういうものでしょうか。

児童対象性暴力防止法は、学校や保育所、児童福祉関係の事業者に、その業務に従事させようとする者について、性犯罪事実の該当者であるかどうかを確認する犯罪事実確認義務を負わせます。学校などの事業者は、こども家庭庁を通じて法務省に、就業希望者の性犯罪歴を照会することになります。性犯罪歴が確認された場合、事業者にその就業希望者を採用せず、また現職の教員らには子どもと接しない仕事に配置転換するなどの対応を求めることになります。対象となる性犯罪は、不同意性交等罪などの性犯罪の他、痴漢や盗撮を取り締まる都道府県の迷惑防止条例違反を含み、拘禁刑の刑を終えてから20年、罰金は10年。拘禁刑で執行猶予の場合は判決確定日から10年です。

また、この法律は、事業者に、児童対象性暴力等の防止に務め、児童等を適切に保護する責務があるとしています。そして、被害の早期の把握、防止するために必要な措置、性暴力等が疑われる場合の事実の有無や内容の調査、児童の保護や支援の措置、教員への研修等を義務付けています。

この法律の対象となるのは、学校や保育所、児童福祉関係の事業者のほか、それと同等の措置を実施する体制が確保されている認定を受けた民間教育保育事業者とされています。つまり、学習塾やスポーツクラブなどの場合は、義務ではなく任意(事業者の判断に委ねられる)の認定制度で、ベビーシッターや家庭教師といった個人事業主も含まれていません。

「日本版DBS」が導入されることで、子どもを対象とした性暴力の未然の防止が一定程度は可能になりますが、認定を受けていない事業者に子どもに性的な欲望を抱く者が集中するのではないかと危惧されています。

子どもの性暴力被害に対する安全対策

子どもに対する性暴力は、保育園や学校・塾・スポーツクラブなど、子どもの生活のあらゆる場面で発生しています。私は8年前、不登校の子どもが利用するフリースクールでの職員からの性加害事件を担当しました。その事件が解決した2019年7月、被害者の方が17項目の「子どもの性暴力被害に対する安全対策」を発表しました。子どもの保護の施策作りのためにとても参考になる内容です。ご本人の了解を得て紹介しますので、是非ご活用ください。

① 大人と子どもとは対等ではなく、圧倒的な力の差があるのだということを理解したうえで関わる

② 利害関係のない人達で構成された第三者委員会を設置する

③ 第三者委員会はスタッフや子どもに対する性暴力の研修・ワークショップを決定・意見・助言する

④ 第三者委員会が選んだ外部の相談窓口の体制を整備する(子ども用もスタッフ用も)

⑤ 性的虐待を防止・根絶するため、この安全対策の検証も定期的に行う

⑥ 第三者委員会の選んだ外部の講師による人権研修を定期的に受ける(スタッフ・子ども・保護者)

⑦ 子どもがSOSを出しやすいようスクールカウンセラーを配置する

⑧ 被害に遭わないために、また、被害に遭ってしまった時にSOSを出せるよう、子ども達がいつでも手に取れる場所に性暴力に関する書籍を複数置いておく

⑨ 入所時に外部の相談窓口のリーフレット一式を渡し、トイレや壁など施設内の各所に常に配置しておく

⑩ 業務外の個人的なやりとりは禁止する

⑪ 大人と子どもが対等ではないことを自覚できないまま行われる宿泊行事(イベント)は両者にとって危険である為、実施しない

⑫ 既に諸外国で取り入れられているように、採用時に性犯罪歴の有無を確認し、有れば採用しない

⑬ 子どもに対する性暴力を含めた、性暴力防止規定を作成し、就業規則を整備する

⑭ 被害の疑いが出てきた時点で、組織は隠ぺいせずきちんと調査し、被害者が守られるように努める。加害者が被害者と接触しないよう加害者には自宅待機命令等を出す。調査の間も被害者が望めば変わらず通えるように環境を整える

⑮ スタッフが加害した場合は懲戒処分にする

⑯ 加害行為が起きた場合「加害者個人の行ったこと」とトカゲのしっぽ切りで済まさず、組織の意識や構造の問題でもあるという意識を持つ

⑰ 調査の結果、加害の有無に関係なく再発防止策を講じる

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