【性暴力禁止法の制定に向けて】
2014年11月1日〜2日にかけて、山口県宇部市で開催された「第17回全国シェルターシンポジウム2014inうべ」に参加してきました。シェルターシンポジウムとは、全国からDVや性犯罪被害者等の支援団体が参加し、1998年から年に1度開催されています。
これまでにも、被害者支援や立法のあり方、震災等の被災者支援、女性や子どもに対する暴力の根絶のための施策等、様々なテーマが取り上げられてきました。今回のテーマは、「性暴力禁止法の制定に向けて つながる 変える 女性・子どもに対する暴力のない地域に」でした。
1日目は、元法務大臣の南野知惠子さんの基調講演と、上記のテーマでのシンポジウムが開催され、2日目は、午前・午後それぞれ7つの分科会が行われました。
5ページで、雪田弁護士が、性暴力に関する現行法の規定について詳しく述べていますが、現在の刑法の規定は、「性的自由」を保護しているとはとても言えない構造になっています。
そこで、性暴力は個人の性的自由を侵害する重大な犯罪であり、被害者の心身への悪影響が多大である、との観点からの法整備が求められているのです。そして、被害者が、どのような心理状態に陥るか、ということへの理解も求められています。
シンポジウムでは、南野さんの他、産婦人科医師の河野美代子さん、精神科医師の竹下小夜子さん、NPO法人ハーティ仙台の代表で助産師の八幡悦子さんからの報告がありました。紙幅の都合ですべてはお伝えできないのですが、私が特に印象深かった点をいくつかご報告したいと思います。
【中・高校生の妊娠、相手の多くは社会人男性】
まず、DVや性暴力の被害者に対し、医師として支援を行ってきた河野さんからは、未成年の女性の性被害や望まぬ妊娠の深刻さをうかがいました。中でも、中学生や高校生が妊娠するとき、その相手の男性の多くが社会人であると聞いて、私はとても驚きました。
中学生・高校生同士が交際をし、避妊の知識のないままに想定外の妊娠をするのではなく、無責任な大人の男性によって、未成年の女性が被害を受けているのです。そして、若年であればあるほど周囲への相談は困難になり、また、親や学校関係者も、まさか妊娠しているとは思わないため、気付いた時には人工中絶が可能な時期を過ぎてしまっているのです。
【性犯罪被害者の心理】
精神科医師の竹下さんからは、性犯罪被害者が、被害直後よりも、むしろ、時間が経ってからの方が、記憶の混乱や健忘、心理状態や身体症状の悪化が見られることが説明されました。このことは、被害者支援を担う方々には知られているかもしれませんが、警察や検察、裁判官等、刑事司法関係者にはまだまだ理解されていません。
すると、被害者は、捜査や裁判の中で、「被害にあったばかりで動揺している時には詳細に供述できたのに、しばらく経ったらまるで話ができない。これは、被害者が嘘を言っているからだ!」等という見当違いな批判に曝されることになります。そうなると、当然、裁判は加害者に有利な結果になってしまいます。
【時代錯誤の性教育】
八幡さんからは、現在の教育現場での性教育の難しさが語られました。八幡さんは、義務教育の中での性教育が重要だと考えておられますが、現在の中学校で行われている性教育の内容は、若い人が、自分の体と心の健康を守るためには全く不十分なものなのだそうです。
「避妊」をダイレクトに説明することすら問題視されると聞き、世の中に性に関する情報が氾濫している中で、そんな時代錯誤なことが起こっていることに驚きました。何も知らなければ、自分が被害にあったとしても、加害者になったとしても、その事実に向き合うことすらできません。
刑法がどのように改正されるか、皆が注視しています。それと共に、被害者の実情が社会に広く認識され、そして、何より被害にあう人がいなくなる、つまりは、加害者をなくすために、活動を続けていくことが必要なのだという認識を新たにしました。