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2013年08月26日
仕事・労働裁判事例
宮地 光子

人事考課まるのみの高裁不当判決—中国電力男女賃金差別事件— 弁護士 宮地 光子

【性差別的な評価につながる人事考課】

「私の職能等級が13年間、主任2級に留め置かれている間に、私より12歳以上年下の男性社員が私を飛びこして昇進昇格していくのを目の当たりにすることは、落胆と苦痛以外のなにものでもありませんでした。……女性であることだけを理由に低い職能等級に留め置かれることがどれほどの悔しさと屈辱に値するのか。この屈辱を晴らしたい一心で裁判に立ち上がりました。」中国電力で働く長迫忍さんは、本年5月、広島高裁での結審にあたって、その提訴の動機をこのように語りました。

長迫さんは、男女賃金差別を理由に、会社に対して損害賠償請求等を求めて、平成20年5月に広島地裁に提訴しましたが、同地裁は、平成23年3月17日にその請求を全面的に棄却する不当判決を言い渡しました。長迫さんは控訴し、私は、控訴審の段階から、他の6名の弁護士とともに受任し、その後、約2年余にわたり広島高裁での審理に取り組んで来ました。しかし本年7月18日、広島高裁第4部(宇田川基裁判長)は、長迫さんの控訴を全面的に退ける不当判決を言い渡しました。

判決は、一審判決と同じく、男性労働者が女性労働者よりも昇格が早いことを認定しながら、女性従業員に管理職に就任することを敬遠する傾向があったこと等を理由に男女間の昇格格差を男女差別であるとは認定しませんでした。そのうえで判決は、長迫さんが、13年間も同じ等級に留めおかれたことを違法でないとしているのですが、その理由は、人事考課です。

判決は、「(会社は)従業員に対し、個人の成果だけでなく、職場の一体感やチームワーク向上に対する能力・成果も求めていたものというべきである。」としたうえで、「ところが、上記のとおり、控訴人は、業務の結果については高く評価されている一方、協力関係向上力、指導力については問題があると評価されていた」としています。

私達は、人事考課制度について、恣意的な評価が可能であり、また性差別的な評価につながる構造をもっていることを指摘し、特に能力評価の「協力関係向上力」や「指導力」などという項目が、女性に対して低く、不利益に判断される恐れがあること主張してきました。しかし判決は、この私達の主張を斟酌することも全く行なわずに会社の人事考課をまるのみして、長迫さんが昇格できないことを合理化したのです。

 

【人権のための国際基準を果すことを求めて上告】

さらに高裁判決は、人事考課の結果として、「同じ男性間にも、昇格の早い者、遅い者があり、賃金額にも差があるのであって、男女間で、層として明確に分離していることまではうかがわれない」ことを、男女賃金格差を違法と判断しない理由のひとつにしています。

しかしながら男性間に、昇格の早い者、遅い者があっても、女性の圧倒的多数は、男性の昇格の遅い者と同等の扱いであり、男性の標準者と同じ水準に昇格している女性は、ごく一握りの存在に過ぎません。ところが判決は、このような分離をもってしても「層として分離していない」としているのですから、判決のいう「層として分離」にあたるとされる場合は、男性の全員が女性より賃金が高くなっている場合しかあり得ないことになります。しかしこれでは、人事考課制度のもとにおける男女の昇格・賃金差別について、それを違法であるとして争う道は、ほとんど閉ざされる結果になってしまいます。

ILO、OECD、女性差別撤廃委員会(CEDAW)、国運人権規約委員会などの国際機関は、日本の男女間賃金格差や待遇の格差が深刻であり改善すべきであることを繰り返し指摘しています。

長迫さんは上告を決意し、私達弁護団も、日本の司法が人権のための国際基準を果たすことを求めて、今後ともさらに取り組みを続けたいと思っています。

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