menumenu
電話アイコン

06-6947-1201

受付時間 平日9:30~17:30

お問い合わせ・ご予約はこちら

ニュースレター

2013年01月03日
性被害・セクハラ
角崎 恭子

シンポジウム「性犯罪の無罪判決を検証する」に参加して 弁護士 角崎 恭子

【容易でない、不同意の立証】

本年9月29日に大阪弁護士会館において、シンポジウム「性犯罪の無罪判決を検証する]が開催されました。このシンポジウムは、大阪弁護士会人権擁護委員会内に設置された性暴力被害検討ブロジェクトチームが主体となって開催され、私も同チームの一員として参加しました。

シンポジウムは、近年、性犯罪の裁判で、第一審、控訴審共に有罪認定がなされたにも関わらず、最高裁で無罪判決が下された例が相次いだため、その原因の究明と、問題点の検証を目的に開催されました。

準備の段階で多数の無罪判決を検証し、その中で、被害者の対処行動が問題となったり、被害者の証言の信用性に疑問が呈されたりしたことにより、加害者の行為が刑法で定められた要件を満たしていないと判断されていること等が問題として浮かび上がってきました。

例えば、刑法では、強姦罪の成立要件として暴行・脅迫が要求されますが、被害者の反抗を著しく困難にさせる程度の暴行・脅迫が行われていないと、有罪との認定はされません。被害者は、殺されるかもしれないといった恐怖のため、反抗することはとても困難になりますが、裁判では、多少の暴力には反抗できるはずであるという誤った考え方に基づいて打診がなされニることも多いのです。

また、暴行・脅迫を用いて、被害者が同意していないにも関わらず、無理やりに性行為を行ったことが認定できない場合にも有罪の認定はされません。つまり、被害者が同意していた、あるいは、被害者が同意していると加害者が勘違いしてもしようがないと判断されれば無罪になってしまうのです。

そこで、裁判では、検察官(被害者)は、同意の不存在を立証する必要に迫られ、被害者の被害当時の言動から、明らかに同意がなかったと説明しなくてはならなくなります。

被害者は、加害者を怒らせないよう気を使いますし、加害者が顔見知りの場合は、事を荒立てたくないとの思いから、被害後もそれまでと同じような人間関係を保とうとします。また、被害直後には、動転して理路整然と話ができないこともありますし、恐怖や羞恥心で、正確に話すことも難しく、記憶も混乱しがちです。不同意の立証は容易ではありません。

警察官や検察官は、性犯罪被害者心理やその対処法に詳しくないことも多く、被害者の供述を書面にする際の手際に問題があったり、初動捜査の遅れにより、適切な証拠採取がなされなかったりすることもあります。ですが、被害者の警察や検察での供述、裁判での証言等に変遷があれば、被害者の供述全体が信用できないと判断されることすらあるのです。

【被害者心理の理解を進めることが重要と再認識】

シンポジウムでは、無罪判例について、当事務所の弁護士でチーム座長の雪田樹理委員から分析結果の報告がなされた後、千葉大学大学院専門法務研究科の後藤弘子教授から「最高裁無罪判例の分析と問題提起?なぜ性犯罪無罪判決を歓迎できないのか?」とのテーマで講演が行われました。後藤教授からは、最高裁判例にみられる誤った経験則への言及を始め、暴行・脅迫がなくとも、意に反した性行為を強要すれば罪に問われるべきであり、刑法の改正が必要であるとの問題提起がなされました。

最後にウィメンズカウンセリング京都フェミニストカウンセラー井上摩耶子先生から「裁判所の『経験則』は正しいか?~誤判を防ぐ~」とのテーマで講演が行われました。井上先生からは、被害を当事者の立場から再構築することの重要性や、上記の無罪判例の中にも、未だに根強く残る「強姦神話」を前提とした裁判官の偏見が存在することが指摘されました。

シンポジウムをとおして、被害者の視点から、性犯罪の捜査や裁判の在り方を変えていく必要性や、その前提として、被害者心理の理解を進めることの重要性が再認識できました。100名を超える参加者があり、今後の性犯罪の裁判の在り方を考えていく上で、有意義なシンポジウムでした。

Contact Us

お問い合わせ・ご予約

まずはご相談ください。

電話アイコン

お電話でのお問い合わせ・ご予約

06-6947-1201

受付時間 平日9:30~17:30

メールアイコン

メールでのお問い合わせ・ご予約

ご予約フォーム
ページトップへ