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2012年08月30日
裁判事例

リレーエッセイ 婚外子相続分差別の違憲決定をめぐって 立命館大学法学部教授 二宮 周平 (にのみや しゅうへい)

【新人弁護士に感謝】

昨年10月4日、朝日新聞朝刊一面トップの見出しは、「婚外子の相続差別違憲]だった。小見出しに「大阪高裁決定『家族観が変化』」とある。

この違憲決定を勝ち取ったのは、2010年11月に登録したばかりの新人弁護士である。昨年8月下旬、彼女からメールがあり、婚外子の相続分差別を違憲とする決定が出たので、ぜひ私に見て欲しい、手渡したいとのことだった。彼女は、立命館大学法科大学院の修了生で、「リーガルクリニックⅡ 女性と人権」や「家事法務Ⅰ」を受講していたことから、私に連絡してくれたのだった。

9月23日に彼女と会い、決定文を見せてもらった。決定(大阪高決平23・8・24判例時報2140号19頁)は、違憲の理由づけとして、①婚外子差別は本人の意思によって左右できないことによる区別となること、②相続分差別は、法が婚外子を婚内子より劣位に置くことを認める結果となり、いわれのない差別を助長する結果になりかねないことを考慮して、慎重に検討するとした上で、③平5・7・7最高裁大法廷決定以降の最判の反対意見・一部補足意見、法制審議会の答申、家族生活の実態の変化、国民意識の多様化、国際人権規約委員会の意見、諸外国の区別撤廃の進捗、平20・6・4最高裁大法廷の国籍法3条1項違憲判決、戸籍・住民票の続柄差別の撤廃など、立法事実の変化を指摘して、被相続人が死亡した2008年12月27日には、相続分の区別(民法900条4号ただし書)は立法府の合理的な裁量判断の限界を超えていること、④前述大法廷決定から本件相続開始まで13年以上が経過し、婚外子が少数者として民主過程における代表を得難いことが明らかになったともいえるから、決定・判決の遡及効を理由に違憲無効との判断を避けるのは相当ではないことをあげている。

この判旨は、彼女の書いた抗告理由によるところが大きい。これまでの最判の少数意見・補足意見が述べていたことを中心に立法事実の変化を実証的に記述しており、裁判官が依拠しやすい構成になっていた。これは、ぜひ公表すべきだ、判例時報社などに連絡し、また新聞社にも伝えてはどうか、申立人がOKであれば、長くこの問題を追っている朝日新聞の記者を紹介するよと話したところ、その方向で進んだ。彼女は弁護士会への連絡や記者会見をしていなかったので、取材はこの記者だけだった。

もともと朝日新聞は、10月4日の一面トップに日本人医師のノーベル医学賞受賞を予定していたところ、受賞しないというニュースが入ったため、紙面が急に空いてしまった。そこで記者が違憲決定の意義を述べ、スクープであることを強調した結果、上記のような紙面になったという。偶然の結果だが、社には千件を超える多数の読者から感銘、激励のメール等が届き、編集部も少数者の人権問題に対して襟を正したそうである。

この間、適用違憲判決が出ている(東京高判平22・3・10、名古屋高判平23・12・21)。本事業について民法900条4号ただし書を適用するのは憲法14条違反とするものである。しかし、本決定はこの規定自体を違憲とした。法令違憲と言われるもので、その価値は高い。

これを勝ち取ってくれたことに対して、心から彼女に感謝したい。法科大学院で授業を担当する者として、こうした修了生に出会えること以上に幸せなことはない。

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