menumenu
電話アイコン

06-6947-1201

受付時間 平日9:30~17:30

お問い合わせ・ご予約はこちら

ニュースレター

2012年08月30日
結婚・離婚子ども面会・養育費
雪田 樹理

養育費をめぐる問題  弁護士 雪田 樹理

【養育費の取決め状況】

日本では年間25万件の夫婦が離婚しており、そのうち子どものいる夫婦の離婚が約6割、うち全児童の親権を母が取得するのが約8割だそうです。1年間に約12万件の母子世帯が生まれています。離婚後の女性の経済的自立は厳しく、父親による養育費の支払いが重要な意味を持ってきます。

では、いったい、どれくらいの人が離婚のときに養育費の取決めをしているのでしょうか。

厚生労働省の平成18年度全国母子世帯等調査の結果によると、調停や訴訟で離婚をした場合には8割近くの人が養育費の取決めをしていますが、離婚の9割を占めている協議離婚の場合には、養育費の取決めをした人は3割しかいませんでした。全体では、約4割の人しか養育費の取り決めをしていないのです。しかも、取決めのある人のうち、現在も支払を受けていると答えた人は46%です。つまり、離婚後に継続して養育費の支払いを受けている人は、わずか2割程度なのです。

 

【養育費に関する政策の不備】

養育費の取決めや支払いの確保に関して、わが国はどんな政策を取っているのでしょうか。他の先進諸国では、子どもの福祉を重視する立場から、養育費の取決めがないと離婚できない仕組みをとったり、国による養育費の立替払や支払確保のための制度が整備されているなど、国や裁判所が積極的に関与しています。しかし、日本では、子どもの扶養は家庭の責任・個人の責任にされていて、養育費の支払いを確保するための実効性ある制度はほとんど確立されていません。

ようやく2002年に母子寡婦福祉法が改正されて、①父親には養育費を支払うよう努めること、②母親には養育費を確保できるように努めること、③国や地方公共団体には、養育費確保のための環境整備に努めることが規定されました。しかし、これは努力義務ですので効果はありません。2007年10月に「養育費相談支援センター」が創設されましたが、ほとんど知られていないように思います。センターの創設で、状況が改善したわけでもありません。

 

【簡易算定表の問題】

養育費を巡って1つ大きな変化があったのは、2003年、東京・大阪養育費等研究会が、「簡易迅速な養育費等の算定を目指して養育費・婚姻費用の算定方式と算定基準の提案」を発表して、それ以後、家庭裁判所の調停や審判・裁判で、簡易算定表を参考に養育費が決められるようになったことです。

父と母のそれぞれの収入を算定表に当てはめるだけで、養育費の額が簡単にわかるため、裁判所も調停委員も、そして弁護士も、実務家はみな揃って、この算定表を利用して養育費を決めるようになりました。

ところが、便利な表ではあるのですが、養育費の金額が低くてがっかりすることが多くあります。近年、この算定表に関して、研究者らから疑問が出されており、「低い養育費」が計算された算定方式に問題のあることが明らかになってきました。

例えば、実家で生活して住居費のかからない義務者(父親)が年収600万円、中学生と高校生の子どもがいて賃貸のアパートで生活する権利者(母)の年収が120万円の場合、算定表では上限10万円の養育費になります。父は年間120万円の養育費を支払っても480万円の年収で生活し、他方、母子3人は、養育費をあわせても年間240万円の収入で、そこから家賃を支払い生活することになります。これではあまりにも不公正で、「子どもの貧困」を生み出すものだと指摘されています。

今年3月、日弁連は、裁判所は、この算定方式に代わる、子どもの成長発達を保障する視点を盛り込んだ新たな算定方式の研究を行い、その成果を公表すべきだなどとする意見書を発表しました。大阪弁護士会でも来る11月17日(土)、養育費問題に関するシンポジウムを開催しますので、興味関心のある方は、是非ご参加ください。

Contact Us

お問い合わせ・ご予約

まずはご相談ください。

電話アイコン

お電話でのお問い合わせ・ご予約

06-6947-1201

受付時間 平日9:30~17:30

メールアイコン

メールでのお問い合わせ・ご予約

ご予約フォーム
ページトップへ