本年4月3日~6日まで、弁護士会より韓国の性暴力被害者への対応について、韓国の現状を視察・調査をしに行きました。具体的には、ワンストップセンター、検察庁、弁護士事務所、性暴力相談所、女性センターなどを訪問しました。
【韓国の刑事法制度】
韓国では、刑法の特別法として「性暴力犯罪の処罰に関する特例法」が定められています。特例法は、親戚関係にあるものや複数の加害者からの強かん・強制わいせつ行為、13歳未満の者が被害者である強かん・強制わいせつ行為など被害の類型を細かく分け、法定刑を加重しています。
性暴力犯罪については、検察庁に専門取調室を設けること、裁判所にも専門部を置くことを義務付けています。実際、検察庁を視察した際には、専門取調室の検察官から話を聞きました。専門取調室ができたことによるメリットとしては、他の事件関係者の出入りがない静かな場所で、被害者が落ち着いて事情聴取を受けられるという話でした。日本では、性被害を告訴しても事情聴取は他の事件の被疑者らと同じ取調室で行われることも多くあり、このような配慮は日本においても行われるべきです。
また、特例法では、被害者が取り調べによる二次被害を受けないよう取り調べ回数は必要最小限にせねばならいことを定め、被害者が16歳未満の場合は、証言の内容をビデオ録画す為ことを義務づけています。証言を録画したビデオは、刑事裁判において、被告人の弁護人の同意がなくとも証拠として用いることができます。
【ワンストップセンター、ひまわり児童センターの視察】
ワンストップセンターは、ソウル警察病院内とポラメ病院内に設置されているセンターの2か所を訪問しました。ワンストップセンターでは、24時間体制で被害者支援を行っています。
ワンストップセンターには、医師や女性警察官が在籍しており、被害者がワンストップセンターに駆け込めば、証拠の採取や治療を受けることができ、被害者の希望により告訴手続を行うこともできます。センター内には、観葉植物や熱帯魚が泳ぐ水槽があり、被害者がリラックスできる空間づくりがされていました。
ひまわり児童センターは、13歳未満の被害児童を対象とした機関です。機能はワンストップセンターと同様ですが、児童精神科医が児童の父母と面談し、児童の心理状態を踏まえ治療計画を策定するなど、より児童の被害のケアに特化した機関です。今回、ソウルのひまわり児童センターを訪問しましたが、ワンストップセンターのよりもさらにアットホームな空間づくりがされており、まるで保育所のようでした。
これらの機関の予算は、国と自治体が負担しているということでした。日本では、2010年4月に大阪府松原市の阪南中央病院内に、「性暴力救援センター大阪(SACHICO)」が設立されましたが、民間で資金源は寄付により作られた基金です。韓国では、ワンストップセンターが全国に17カ所、ひまわり児童センターは10カ所存在します。また、2009年にはワンストップセンターとひまわり児童センターを統合し、両者の役割を担わせる「総合ひまわり女性児童センター」が全国に4カ所設置されました。
【まとめ】
韓国はお隣の国で日本と比較されることが多いですが、性暴力被害者支援では完全に後れをとっている状況です。韓国では、被害者支援もさることながら加害者更生プログラムも熱心に行われています。日本で韓国と同様の機関を設置するならば、予算の確保・法改正が必要になってくると思います。日本では、何ができるのか?日本の法制度の課題につき、この調査から学んだことを踏まえ、今年の10月にシンポジウムを予定しております。