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2011年01月30日
性差別・ジェンダー
雪田 樹理

女性と貧困 弁護士 雪田樹理

【ジェンダー不公正を正す視点を持って】

私は、一昨年より、弁護士会の活動で貧困問題にかかわっています。大阪弁護士会は、昨秋、「貧困・生活再建問題対策本部」を立ち上げました。事務所での事件の経験を生かして、経済的にも社会的にも弱い立場に置かれ、様々な困難に直面することを余儀なくされている女性の目線で関与していきたいと考えています。

以前は、「一億総中流」などと言われていた日本社会も、近年は「格差社会」と言われるようになり、派遣切り、高い失業率や自殺率、若者の就職難、貧困問題などが社会問題としてクローズアップされています。非正規で働く男性が増え、低収入の男性が増え始めたことで、世間は「格差」や「貧困」の問題を取り上げるようになってきました。女性はずっと以前から低賃金で、首を簡単に切られるパート労働者が多く、男女間の賃金格差は2分の1だったのですが、国や政府・労働組合やメディアが、こういった女性差別の問題を取り上げることはほとんどありませんでした。労働運動もメディアも、主要な稼ぎ手である男性達に危機が迫って、ようやく動き始めたといえますが、このことは日本社会全体が男性主導の社会であり、ジェンダー不公正な社会であることの現われだと思います。

さて、近年は男性も貧困になり始めたとはいえ、圧倒的に女性が貧困である事実は、いまも変わりはありません。女性は年収300万円以下が66%、200万円以下が44%であるのに対し、男性は300万円以下が22%です。他方、年収700万円を超える男性は22%おり、女性は3%しかいません。貧困や格差問題を解決するためには、性差別をきちんと認識し、ジェンダー不公正を正す視点が不可欠です。

 

【貧困は社会構造的に生み出されている】

2009年10月、厚生労働省は初めて、日本の絶対的貧困率(等価世帯所得の中央値の50%未満の低所得の世帯員の割合:等価とは世帯所得を世帯員数の平方根で割る)を公表しました。2006年には15.7%で、OECD加盟国30カ国の中で4番目に高い貧困率です。子どもの貧困率は14.2%で、7人に1人の子どもが貧困状態に置かれています。また、母子家庭の貧困率は58%と高く、1人暮らしの高齢女性も半数近くが貧困状態に置かれているそうです。

母子家庭の母の85%は働いており、その平均就労収入は171万円に過ぎません(平成18年度)。また、貧困世帯のうち、二人以上が働いている世帯は39%もあり、東京大学の大沢真理教授の表現を借りれば、「働いても貧困」、「共稼ぎでも貧困」というのが日本の実態なのです。

しかも、本来、格差を緩和し、貧困を削減する役割を果たすべきである税制や社会保障制度が、法人や高所得者・資産家の負担を軽減する構造改革がなされてきたことや、社会保障負担率が一貫して上昇してきたことによって、税制や社会保障による再分配効果が極端に低いのです。とりわけ、共稼ぎ世帯と働いている単身の世帯は、税制と社会保障によって、逆に貧困率が引き上げてられてしまっているという、不公正で異常な事態が生じているそうです(大沢真理教授の弁護士会での講演より)。

このように貧困は、個人の努力が足りないからでも、働かずに怠けているから生まれているのでもありません。個人の自己責任ではなく、社会的構造的に生み出されているのです。

性別や雇用形態(正社員、パート、派遣、契約社員など)にかかわらず、差別のない賃金や雇用条件を実現すること(同一価値労働同一賃金の原則や均等待遇の原則等)、格差を緩和し、貧困を削減する公正な税制や社会保障制度を実現することが、女性の貧困を解決する道ではないでしょうか。女性の貧困が解決されれば、子どもの貧困もぐ~んと改善するはずです。

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