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ニュースレター

2011年09月20日
性差別・ジェンダー

(リレーエッセイ)東日本大震災・原発事故と女性 弁護士 (特活)ヒューマンライツ・ナウ事務局長 伊藤 和子

3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震と津波は甚大な被害をもたらし、福島第一原発の事故により今も広範な地域の住民が深刻な影響を受けている。
大規模災害後の救助・復旧・復興には人権の視点が欠かせないことは、阪神淡路大震災の大きな教訓であるが、被災から4か月以上が経過した今、被災者の基本的人権は残念ながら深刻な事態にある。

NGOヒューマンライツ・ナウで、震災後、被炎地の人権状況の調査・モニタリングをしてきたが、避難所では、多くの方々が栄養価の著しく低い食事をとり、著しく狭い場所にプライバシーもなく寝起きし、疲労とストレスが深刻化している。炎害の景三響をより深刻に受けやすい子ども、女性、シングルマザー、障がい者、外国人、高齢者などへの特別な配慮もなされていない。

避難所で生活する女性のニーズを考慮すれば、プライバシー保護のための間仕切りや、女性の更衣室・授乳場所の設置、安全なトイレ、入浴施設、洗濯設備等の設置、支援物資に女性特有のニーズを把握すること、女性のための相談の機会提供が必要だ。今回の震災後、内閣府もこうした配慮が必要だとする通知を出したが、避難所ではこうした通知が絵に描いた餅になり、実施されていない。間仕切りは「避難所の団結を阻害する」などとして導入されず、女性たちのニーズは「非常時に贅沢だ」と言われ、行政による災害救助法に基づく食事提供がなされないまま、被災女性が連日被災者のための膨大な調理を負担させられ、疲弊している。

もともとの地域のコミュニティの意思決定がそのまま避難所運営に移行し、女性の参加は乏しい。伝統的な性別役割分担が非常時の避難所運営において強化され、女性は困難な地位に置かれている。災害時の人権保障に第一次的に責任を負うのは国である。国は単に自治体に通達を出して丸投げするのでなく、積極的な是正策を講じなければならない。

災害によってそれまでの矛盾が顕在化・深刻化しているのは避難所にとどまらない。震災後女性たちが一斉に雇用を失ったが、その背景には、東北の女性たちの多くが非正規労働に従事し、無権利状態に置かれてきた実態がある。シングルマザーなど特に援助を必要としている人々への就労支援を中心に、女性たちの就労支援が国に求められている。また、今後増加することが予測されるDVへのきめ細かい対策も必要となる。

国が昨年12月に公表した第三次男女共同参画基本計画には、災害復興における男女共同参画について明確で充実した方針が打ち出されているが、現実には、避難所での女性の参画も極めて乏しく、復興会議において女性が1名しか参加していないことに象徴されるように、復興政策全般における女性の萎画の状況は惨憺たるものである。国は抜本的にこうした事態を見直し、男女共同参画に関する国の政策に基づき、復興過程への女性の参画を実現すべきである。

現在、深刻な放射能被害を拡大中の福島においても、放射能リスクから子どもと母体を守ろうとする女性・母親たちの声が学校教育の現場で抑えつけられ、沈黙させられている。最も放射能リスクを負うことになる女性・妊婦が沈黙させられ、健康被害が拡大していく現状を放置すれば、次世代にまで取り返しのつかない事態をもたらす危険性がある。

未曾有の災害に加えて深刻な放射能汚染にさらされるなか、私たちの国のあり方が問われている。私たちは将来の世代に対して責任ある選択をする責務を負っている。原発政策という重要な政策決定を含め、人口の2分の1を占める女性が対等に復興政策に奉加することは極めて喫緊の課題である。

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