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2011年01月30日
DV
乘井 弥生

保護命令の運用に関するアンケートを実施して 弁護士 乘井 弥生

日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会では、昨年、全国47都道府県の配偶者暴力相談支援センターに対して、「保護命令制度の運用に関するアンケート」を実施しました。2001年4月に成立したDV防止法は、2度にわたり改正がなされ、接近禁止命令の対象の拡大や、退去命令の期間の伸長など、被害者保護のための改善が進められてきました。しかし、他方、現場に近い人たちから、法成立当初より逆に申立てが認められにくくなっているのではないかとの声が囁かれたりもしていました。そこで、両性の平等に関する委員会では、昨年、全国的なアンケートを実施し、11月に調査結果をまとめました。私も委員の一人として集約と分析の作業に関わりましたので、内容をごく一部ですが、報告いたします。

 

【過去受けた暴力等の事実が過小評価されていることの問題点】

保護命令は、過去、配偶者から身体に対する暴力や生命等に対する脅迫を受けた被害者が、更に、暴力等を受け、その生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと判断されたときに発令される規定となっています。

ところで、過去受けた暴力が診断書等の証拠で明らかであるにもかかわらず、暴力の被害が直近でないことを理由に申立てが却下されたり、取下げ勧告がなされたりしている例が多数報告されています。「直近の暴力のあとすぐに逃げなかった、怖さがないと判断された」(近畿の某県)「直近の暴力がなく、緊急性が感じられない。『殺す』と言われ『怖い』というのは単に主観』等と言われた」(中部の某県)といった報告です。被害者は、暴力を受けたあと、すぐに逃げることのできる人ばかりではありません。子どもの学校のことや経済的事情、安全に逃げ出すためのタイミングを見計らうなど、往々にしてあることです。今回の調査では、現場の相談員と裁判所との間において、被害者の置かれている危険性の認識に齟齬のあるケースの多いことが明らかになっています。

 

【退去命令の発令が不当に狭められ運用されていることの問題点】

退去命令については、2001年に初めて制定されたときは、期間は2週間であり、かつ、再度の申立ては認められていませんでした。2004年改正により、期間は2カ月と長くなり、かつ、再度の申立てについても、発令が可能となりました。

ところが、近年、退去命令の期間が長くなったことが影響してか、退去命令が発令されにくくなったとの声が聞こえるようになりました。今回のアンケート結果を見ても、「接近禁止は出ても退去命令は発令されないと言われ、退去命令について取下げを迫られた」(関東の某県)「裁判所の勧めにより退去命令のみ取下げをしたケースで荷物取り出しに非常に苦慮したケースがあった」(九州の某県)など、退去命令の発令を不当に狭めるような裁判所の運用に対して、疑問を投げかける声が多数挙げられていました。

 

【被害者支援の現場からもっと声をあげていくいことの重要性】

このほかにも、「夫が誓約書を書いたので、保護命令という権力で抑えるより、離婚調停の中で話し合いをしたほうがよいと取下げを勧められ、取り下げたが、取下げ後、夫は『誓約書には法的拘束力はない』と言い、母子の居所を探る行為があった」(中部の某県)など、裁判所が加害者のうわべだけの「反省」を鵜呑みにした結果、問題が発生した例、申立てから結論が出るまで長期に及んだ例、さらには、裁判官や書記官の研修の不十分さを指摘する声など、被害者支援に日々携わる現場から様々な声があがってきました。

保護命令の申立ては、代理人に弁護士がつく割合が低く、本人による申立ての割合が圧倒的に多いと言われています。そのため、これまで裁判所における保護命令の運用に関してモニタリングがなされる機会はほとんどありませんでした。私たち弁護士は、被害者支援として何が不足しているか、何が求められているかを常に検証するとともに、現場に近い者として、DV被害者保護のための立法や、法の運用に関してもっと声をあげていくことが必要だと思います。

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