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2011年01月30日
性被害・セクハラ裁判事例
宮地 光子

学部自治とセクシャル・ハラスメント 弁護士 宮地 光子

【京大全学ハラスメント委員会が認定】

京都大学経済学研究科の院生だった女性Aさんは、同研究科の2人の男性教授からハラスメントを受けたとして、昨年7月に同教授らと京都大学を被告として京都地裁に損害賠償請求訴訟を提起した。

東大の上野千鶴子教授は、大学にはアカハラを問題化しにくい機構的な障害があるとして、「その第一は、学部自治、学科自治の名の下で相互不干渉であり、監督責任の不在である」と指摘している。ここで「学部自治」とは、大学当局をもってしても、学部内の運営には関与出来ないということであり、この運営には、教員人事、教育方針、カリキュラムの組成など広範囲のものが含まれる。そしてこの「学部自治」が、何を根拠としているのかと言えば、学問の自由を守るための「大学の自治」いうことになるらしい。しかし私には、この「学部自治」が、大学のセクシュアル・ハラスメント対策の実効性を著しく阻害していると思えてならない。

Aさんは院生だった頃に、指導教授から「研究者にならないなら大学院をやめてしまえ」と言われたり、修士論文の指導をしてもらえないなどの研究指導上のハラスメントを受けたばかりでなく、研究室内での二人きりの指導の際に酒を飲まされたり、レストランや居酒屋等での飲食につきあわされたりした。そしてその際、就職の世話をちらつかせたり、家族は留守だから自宅へ行こうなどと誘われたりした。また別の教授からも、飲食への誘いを受けたり、水商売に向いているという趣旨のハラスメント発言を受けたりした。そして大学院卒業後、指導教授の紹介で、同研究科の時間雇用職員として働くようになった後も、飲酒につきあわされるといったセクシュアル・ハラスメントや仕事上でのパワー・ハラスメントが続き、結局退職せざるを得なくなった。

そのためAさんは、退職直前の2008年2月に、大学の全学相談窓口に相談を行い、さらに全学ハラスメント専門委員会に調査・調停手続きの申立を行った。この全学ハラスメント専門委員会は、学部を越えて設置されたハラスメントの調査機関である。しかし京都大学のセクハラガイドラインによれば、この全学ハラスメント専門委員会において調査・調停を行うにあたっては、当該学部の長が、この専門委員会の調査に協力すること及び調停内容ないし対応案に従うことを確約することが必要とされている。

つまり、当該学部がそれを拒否すれば、そもそも全学ハラスメント専門委員会は機能しないのである。

Aさんのケースでは、何とか学部が、この確約をしたので、専門委員会での調査が開始された。そし専門委員会は、Aさんが指導教授について問題にした数々のハラスメントのうち、7つの行為についてハラスメントであると認定し、経済学研究科に対して「懲戒の手続きを開始するのが相当である。」との対応案を示した。また別の教授については、1つの行為ついてハラスメントと認定し、「訓告等の手続きを開始するのが相当である。」との対応案を示した。

【「学科自治」が認定を骨抜きに】

ところがその後、経済学研究科は、半年以上かけて、事実認定をやり直し、指導教授については、全学の専門委員会が認めた7つの行為のうち、2つの行為についてしかハラスメントを認定せず、懲戒手続きも開始せずに、訓告で終わらせたのである。処分は「注意」「厳重注意」「訓告」「懲戒」の順に重くなり、訓告は懲戒ではないのである。そして別の教授に対しては、1つの行為についてハラスメントと認定する結論は変えなかったものの、専門委員会が示した訓告を行わず、口頭注意で終わらせてしまった。

このように、全学ハラスメント専門委員会の結論を、学部において簡単にひっくり返せるのであれば、そもそも全学でのハラスメント調査や対応案の提示は、全く時間の無駄だったということになる。

上野千鶴子教授の指摘する「学科自治の名の下での相互不干渉と監督責任の不在」は、今も歴然と生き長らえて、セクハラ対策を骨抜きにしてしまっている。裁判にまで立ち上がったAさんの勇気が報われる日の来ることを願わずにはおられない。

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