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2011年01月30日
性差別・ジェンダー

「言葉」にみるジェンダー意識と「言葉」の力— 退所のご挨拶 弁護士 髙田 和加子

【相手を「おまえ」と呼ぶのは男の子?】

もう随分昔のことになりますが、私が大学入試センター試験を受験した際、国語・現代文の問題に、吉本ばななの小説『つぐみ』の一部が抜粋されていました。主人公の病弱な少女つぐみは、その人形のように繊細で美しい外見からは想像しがたい、‘男の子’みたいな言動をとる女性として描かれています。抜粋された原文でも、つぐみが相手(少年)のことを普段通り「おまえ」と呼んでいる場面が出ていました。そのため、つぐみを「男の子」と勘違いし、文脈がわかりづらく困惑したという受験生の感想をよく耳にしました。幸い、受験以前に偶然この小説を読んでいた私は勘違いせずに済んだのですが。

ところで、なぜこのような勘違いが生まれるのでしょうか。

『ジェンダーで学ぶ言語学』(中村桃子編・世界思想社)に、ジェンダーについて、言葉の使い方の観点から興味深い考察がなされていました。同書に沿って今の問いを考えてみると、まず、私たちの意識のなかに、女性はふつう相手のことを「おまえ」とは呼ばない、という命題が備わっています。「おまえ」という語彙は、どちらかといえば、男性が使う言葉として認識されており、相手を「おまえ」呼ばわりする女性には粗野で乱暴なイメージが与えられます。世間には、男性は男性らしい言葉を、女性は女性らしい言葉を話すものだ、また、話すべきである、という規範が存在するのです。だからこそ、小説の世界では、その枠組みから外れたキャラクターを描くことで、そのキャラクターの特異性を浮き彫りにし、文学的味わいが出るのでしょう。

ただ、同書によれば、世間に浸透してきた男性/女性という二項対立構造が、現代ではどんどんゆらぎを見せているそうです。テレビドラマや小説、漫画などをとってみても、そこに出てくる会話文を分析すると、語尾に「・・・だわ」「・・・わよ」という、典型的な女性らしい話し方を女性がするとは限らなくなっていると指摘されていました。また、キャラクターの特徴づけのため、敢えて登場人物に女性らしい話し方をさせる場合があっても、実社会では、一貫して女性がいわゆる女性らしい話し方をすることはあまりみられず、会話の字面だけをみれば、話者が男性か女性か判別つかなくなっているということです。

なるほど、そう言われてみれば、そうかもしれません。男性も女性も同じような言葉づかいをする傾向は若い世代でより顕著なようですが、男女平等教育の浸透度も関係しているのでしょうか。

【ひとつの言葉で社会の価値が変わることも】

思い起こせば、私が高校生の頃は、残念ながらまだ家庭科が男女別修制でしたし、中学生の頃も、保育は女子だけが学び、その間、男子はパソコンを習っていました。「男子だけ筆記試験科目が少なくてずるい」、とか、「何で女子にはパソコン触らしてくれへんの」とか、女子は皆、文句を言って、なにか解せないもやもやを抱いていました。実態はさておき、男女の別なく仕事を持ち、家事育児も分担しあう、ということが少なくとも建前上は当たり前になった今から思えば、信じられないことでした。時代は変わるものだとつくづく思いますが、それでも性差別が世の中から消えたわけではありません。それは様々な形に姿を変えて根深くはびこっています。

『ジェンダーで学ぶ言語学』のなかに、言葉には既に存在する考えが現れるだけでなく、新たな考えを表す言葉によって時代が変革されることがあるという指摘がありました。「たかが言葉、されど言葉」。ひとつの言葉で、世の中の価値観が変わっていくとすれば、私も「言葉」についてもっと敏感になってみようと思いました。


最後に、私事で大変恐縮ですが、家庭の事情によりまして、昨年11月末をもちまして当事務所を退所いたしました。しばらくの間、弁護士業務をお休みさせて頂きます。在籍中は、大変貴重な経験をさせて頂くとともに、皆様方より格別のご厚情を賜りまして、誠に有難うございました。お陰さまで、大変充実した3年間を過ごせましたことを、ここに改めて御礼申し上げます。今後、業務再開の時まで、人としてもさらに成長すべく日々精進して参りたいと存じます。

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