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2010年01月30日
子ども裁判事例

大阪府立国際児童文学館の未来にかけた裁判 弁護士 髙田 和加子

【世界でもユニークな児童文学の研究施設】

最近、児童文学の名作のひとつ、F・H・バーネットの『小公女』がテレビドラマ化されました。ドラマ化されると聞いた時、子どもの頃、主人公セーラの身に起きるひとつひとつに一喜一憂していた日々が昨日のことのように思い出されました。

セーラは、過酷な運命に捕えられながらも、どんな逆境にも心折れることなく、常に清く正しい心を持って生きていこうとする女性です。セーラのような生き方を真似することは並大抵のことではありませんが、そのような心の強さを持つことができたらどんなに素晴らしいことでしょう。大人になった今でもそう思います。

世界の名作が次々とアニメ化されていた昔と違って、『小公女』を知っているという子どもたちは最近では少なくなっているかもしれませんが、それにしても、子ども時代に接した作品というのは、なぜこれほどまで忘れ難い記憶として残るのでしょうか。もちろん、大人になってからも感動作と言われる作品には出逢っています。それでも、子ども時代に味わった感動に勝るものはない気がします。私は、そこに児童文学のもつ不思議なパワーを感じます。

今、その児童文学、正確には児童文学研究のメッカが大阪から姿を消そうとしています。世界でもユニークな児童文学の研究施設が今から26年前の1984年、千里万博公園内に、「大阪府立国際児童文学館」という名称でオープンしました。この文学館は、児童文学研究者である鳥越信先生が長年に渡って個人的に収集された約12万点もの貴重な資料を寄贈され、これを基に設立された研究施設です。その後、国内外の個人・団体・出版社などからの資料の寄贈が相次ぎ、施設独自の収集も含めて現在の所蔵資料は約70万点にも及びます。

そして、この施設の一番の特徴は、図書館と異なり、所蔵資料を後世に残せるよう、文化財として保存し、児童文学研究者である専門員を置いて高度な研究・発表を行い、その成果をレファレンスに生かせる点です。

もちろん、一般の閲覧サービスも行われますが、その場合にも、資料が年代順に並べられているなど、調査研究に利用しやすい工夫が施されています。

【児童文学研究のメッカ再生への祈り】

実は、私が文学を専攻していた大学時代、この文学館にお世話になったことがありました。卒業論文作成のため、ある海外の研究論文集を手に入れる必要が生じたのですが、入手困難で途方に暮れていたところ、大学図書館司書の方から、「大阪に行けば手に入れることができますよ。」と教えてもらい、心から感謝したことを覚えています。訪れた文学館には、そこにしかない貴重な資料が数多くあり、子ども文化の歴史がいっぱい詰まっていました。
しかし、大変残念なことに、長年多くの人々から愛されて生きた文学館は、その所蔵資料を大阪府立中央図書館に移転させて平成22年3月末で完全に閉鎖されることになりました。従来、文学館で培われてきた専門員による研究機能が継承される保障はありません。文化を切り捨てた先には豊かな未来は望めません。

そこで、鳥越信先生を始めとする、資料寄贈者の方々が、原告となって、大阪府を被告として、寄贈資料の返還を求める裁判を2009年3月に提起しました。閉鎖・移転が決定的となった以上、研究施設ではない所に資料が置かれるのは寄贈の条件に反するとして、寄贈資料の返還を求め、本来の研究目的に利用できる状態を取り戻すしかありません。

現在、弁護団の一員として、この裁判に参加させて頂いておりますが、文学館を愛し支えて来られた多くの方々の、児童文学研究のメッカ再生への祈りが通じる日が来ることを信じて、最後まで全力を尽くしたいと思います。セーラのように逆境に負けない心を持って。

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