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2009年08月25日
子ども性被害・セクハラ

大学生にも性教育と性暴力予防教育を 東北大学大学院 文学研究科教授 沼崎 一郎(ぬまさき いちろう)

京都教育大学での集団準強姦事件は、改めてキャンパスの性暴力問題を浮かび上がらせた。しかし、こうした大きな事件だけが問題なのではない。「普通の恋愛」が危険なのだ。そう気づいたのは、仙台の某女子大で「ジェンダー論」を教え始めてからである。その経緯と、私の対応については、『「ジェンダー論」の教え方ガイド-女子大生のための性教育とエンパワーメント』(フェミックス、2006年)に書いたので、ご一読いただければ幸いである。

最近の学生たちは、家庭科は高校まで男女共修であり、男女共同参画についても家庭科や社会科で学習している。ジェンダーという言葉も知っている子が多い。仕事も、家事・育児も、女も男も共にするべきことだと考えている。にもかかわらず、恋愛となると、とたんに話が変わるのである。「彼が不機嫌になると嫌だから」とか「嫌われるのが怖いから」と、避妊しないセックスを受け入れる女子学生が少なくない。そもそも避妊に関する知識が恐ろしく少ない。ピルについて正確な知識を持っている学生は皆無に近い。だから、私の「ジェンダー論」は避妊の基礎知識の教育から始まる。頼りになる産婦人科の紹介もする。

暴力に対する認識も足りない。それどころか、暴力を恋愛と錯覚している。去年から、授業の最初にテレビドラマ「恋空」のシーンを見せて、暴力について考える練習をしている。映画化もされたベストセラー携帯小説で、高校生の恋愛ドラマだから、身近に感じられる。

最初に見せるのは、美嘉とヒロの出会い。ヒロがいきなり美嘉にキスするところを映し、「はい、これってアリですか?」と学生に聞く。ワイワイガヤガヤと騒がしくなるが、大声で叫ぶ。「これは、強制わいせつ罪です。すぐに告訴しましょう!」学生は笑うが、そこで追い討ちをかける。「笑い事じゃないでしょう、暴力犯罪だよ!恋愛とまちがえないで!」と。ヒロが教室から美嘉を連れ出すシーンでは「未成年者略取、誘拐だよ。教師は警察に通報しなくちゃ」と言い、ヒロが怒鳴って美嘉を自転車に乗せるシーンでは「脅迫罪、強要罪だぞ!」とたたみかける。

そして、美嘉がヒロと初めて「結ばれる」シーン。「やさしくするから」と言ってヒロは美嘉をベッドに誘うわけだが、そこで「何か忘れてることない?」と質問する。「第一に、セックスしたいかしたくないか意思の確認を美嘉にしてないね。黙って応じたからと言って、それは同意ではないんだからね。」「第二に、たとえ同意があったとしても、避妊することを忘れてるよね。それで美嘉は妊娠するわけだけど、高校生で妊娠したら困るでしょ。困るようなことをどうしてするんですか?これは立派な性暴力ですよ!」

暴行、脅迫、強要、強制わいせつ・・・犯罪行為の連続が情熱的な恋愛と描かれる。避妊しないセックスが美化される。暴力が恋愛だと錯覚されてしまう。デートDVが横行するわけである。

大学の一般教養科目に実用的な「性教育」と「性暴力予防教育」を取り入れるべきだと思う。デートDVの相談はどこにすればいいのか。もしレイプされたら、どの産婦人科に行くか、どこの弁護士に相談し、誰に付き添ってもらって警察に行くか。被害届や告訴状はどう書けばいいのか。カウンセラーや支援者はどうやって見つけるか。実際に病院や警察を訪れ、弁護士や支援者と顔見知りになっておくことも重要だ。性暴力からの「避難訓練」である。そうした教育が行われていれば、京都教育大の事件は防げたはずだし、大学や周囲の対応も違ったはずだ。

え?加害者の男を何とかしてくれって?実は、それが一番難しい。「戦う男」が評価される社会が続く限り、何を言っても通じないからだ。「戦わない男」つまり「平和な男」こそ「いい男」という社会に変えていかなければならない。それは、私にとっても大きな課題である。

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