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2010年01月30日
子ども裁判事例
髙坂 明奈

少年の否認事件を担当して 弁護士  髙坂 明奈

【警察の違法な取り調べ】

国選弁護人として、逮捕後に警察署で勾留されている18歳のAさんと接見をした。Aさんは、逮捕事実について否認していたが、刑事には全く信じてもらえず、厳しい取り調べを受けていた。取調べの様子から、このままでは自白をしてしまうと思い、Aさんを鑑別所に収容するよう裁判所に対して不服申し立てを行った。しかし、この申立ては棄却された。

少年法43条3項は、「やむ得ない場合でなければ」少年を勾留できないと規定している。しかし、実務では、少年が18歳、19歳の場合は成人と同様、警察署内の留置施設における勾留(最大20日間の身体拘束)という運用がなされている。

留置施設における勾留が自白の温床になり、虚偽の自白を生み出すということは、成人の場合にも言われていることで、ましてや少年の場合は、原則に従い鑑別所における取り調べとすべきあるが(鑑別所であれば、警察官が出張して取り調べをするため、取り調べは原則午後5時で終わる)、本件も実務の適切でない運用に従い、警察署内の留置施設での勾留となった。

その後、刑事はAさんの話を無視して虚偽の内容の調書を作り、「時間がないから押せ!」と署名押印を迫った。また、刑事は、勾留延長の日が近づくと、Aさんに「弁護士がこないだやった準抗告(不服申立て)で俺は夜中の12時半まで家帰れへんかったんやから、今度はそんなんせえへんように言っといてや。」と言い、Aさんを通じて弁護人に圧力をかけてきた。さらに、私が接見に行かなかった日には、「国選やからあんまり来てくれへんねんや。あんな弁護士、付添人にせんほうがいい。」などと言い、Aさんが私に不信感を持つよう仕向けた。

私はできるだけ多く接見をし、Aさんの自白を防ごうとしたが、少年であるAさんが怖い刑事に抗議をし、署名押印を拒否することは難しく、虚偽の自白調書が作成され、Aさんは家庭裁判所に送致されてしまった。

【裁判で争うことの難しさ】

Aさんが家庭裁判所に送致された直後に裁判官と面談をし、Aさんが否認していることを話し、証人として、共犯者と違法な取り調べをした刑事を呼んで欲しいと申し入れた。しかし、裁判官は私の主張に懐疑的で、まず、少年の意見を聴く審判が開かれた。少年事件は、起訴状一本主義(裁判が始まる前に裁判官が見るのは起訴状のみ)が採られている成人の刑事事件と異なり、一切の捜査記録が裁判所に送られ、裁判官は調書に目を通した上で、審判に臨むので、裁判官は有罪の心証をもっていることが多い。

審判の中で、Aさんは、涙を流して非行事実を否認した。私は、接見の時に取り調べの様子を書くよう渡していた被疑者ノートを証拠として出し、違法な取り調べに基づいて作成された調書は出鱈目で、Aさんがやっていないことを立証していった。その後、裁判官は、共犯者を証人として尋問することを決定し、共犯者は主として裁判官が1時間近くかけて尋問をした。その結果、Aさんについては、非行事実について認定しないという判断がなされた。

今回は、共犯者の供述やAさんの被疑者ノートなどの証拠からAさんの自白調書が出鱈目であるということの立証に成功したが、自白調書について争う事は一般的に難しいと言われている。取り調べが可視化され、Aさんの取調べがビデオ録画されていたら違法な取り調べの立証が容易にできたと感じる。

【少年事件のやりがい】

Aさんは、幼いころから虐待を受けて育ち、大人に自分の思いを伝えても何も分かってくれないと非常に投げやりで、大人に対して強い不信感を持っている少年であった。私と初めて接見した時も、表情がなく、この子と意思疎通ができるのかと不安に駆られたこともあった。しかし、事件を通じてAさんと関わっていくうちに、少しずつ自分の生い立ちについて語り、笑顔を取り戻していった。

Aさんは、満足な教育を受けていない子であったが、私が差し入れたノートに丁寧な字を書き、伝えたいことを一生懸命書いてくれた。付添人の活動は、少年の変化を間近に感じることができるのが醍醐味だと思う。今後も、積極的に付添人活動を続けていきたい。

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