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2009年08月25日
性差別・ジェンダー
乘井 弥生

上野千鶴子さんの講演「ジェンダー概念と法」を聞いて 弁護士 乘井 弥生

【生物学的本質主義からの解放】

去る6月19日、大阪弁護士会男女共同参画推進本部では、社会学者の上野千鶴子さん(東京大学大学院教授)をお招きして、ジェンダーと法に関する会内研修をおこないました。その講演内容から、さわりの部分、印象に残った部分を私なりに解釈して、少しだけご紹介したいと思います。

ジェンダーという言葉をよく耳にします。この言葉は、「生物学的性差」を示すセックスという用語に対して、「社会的・文化的性差」を示す用語として使われるようになりました。その意図するところは、性器が違うというだけで、その人の資質やメンタリティやライフコースを決めてしまう考え方からの解放にあるといいます(上野教授はこれを生物学的本質主義からの解放と呼んでいました)。要するに「作られた性差」(例えば、男役割、女役割といったもの)の問題を、はっきりと浮かび上がらせるための概念ということでしょうか。

さて、女性学が発展したジェンダー研究は、今、既存の学問(体系、領域)に「殴り込み」をかけていると、上野教授は言います。人間がいるあらゆる領域にジェンダーという関数が関与しない領域はない、との考え方からです。具体的にはこういう例が紹介されました。

家庭の中で、夫は妻に「おまえは働いていない!」という言葉をしばしば口にします(注;この言葉は「稼いでいるのは俺(男)、おまえ(女)は働いてもいないのに、大きな態度を取るな!」という文脈で男性から女性に発せられることが多いです)。かつて、労働経済学という学問分野では、労働といえば、ペイド・ワーク(報酬労働)だけに焦点があてられてきました。そして、各種統計もペイド・ワークの時間だけが取られていたために、一般に「男性の方が女性よりも長時間働いている」と信じられてきました。ところが、仕事から家に帰っておこなう家事・育児・介護などの労働時間をアンペイド・ワーク(無報酬労働、不払い労働)として定義しカウントすると、男性より女性の方がより長く働いているという事実がデータで裏付けられ、浮き彫りになってきたといいます。なお、労働時間統計にペイド・ワークとアンペイド・ワークのトータルが入ってきたのは1990年代以降のことだということです。ジェンダーの視座で既存の学問を見直すこと、そして、多様な視点を複合的に持ち込むことで、社会変革のための新たな事実の発見があることが指摘されているのだと思います。

 

【現にある差異をどのようにみるか】

そして、もう一つ。上野教授は、ジェンダーに敏感な(gender sensitive)研究というのは、男女の差異をなくする、あるいは、差異を無視する研究では決してない。現にある差異をどのようにみるか、という研究であるということを何度も強調しておられました。

さて、私たち弁護士が仕事をする法律の分野も、ジェンダーの視座で見直していかなければならない分野の一つです。上野教授は、セクシュアル・ハラスメント裁判初期の裁判例をとりあげて、裁判官によるジェンダー・バイアス(社会的性差に対する先入観、偏見)の問題を語り、また、男性弁護士と女性弁護士の収入格差の例をとりあげて、弁護士会の課題についても語っておられました。ジェンダー研究は、とても刺激的で、おもしろい学問だと改めて思いました。

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