menumenu
電話アイコン

06-6947-1201

受付時間 平日9:30~17:30

お問い合わせ・ご予約はこちら

ニュースレター

2009年08月25日
結婚・離婚DV
宮地 光子

離婚事件と生活保護 弁護士 宮地 光子

【最低生活費以下の婚姻費用】

妻の側で離婚事件を担当していると、生活保護が本当に身近なものになる。ある地方公務員の夫は、年齢40歳、年収600万円。いまどきの雇用破壊の現実からすれば、恵まれた立場だ。しかし4歳、0歳の二人の子どもをかかえた収入ゼロの妻が、この夫に突然出て行かれ、生活費も払ってもらえなくなっても、認められる婚姻費用の額は、月12万円~14万円に過ぎない。家庭裁判所は養育費や婚姻費用について「算定方式と算定表」を明らかにしているが、その算定表から出てくる数字が、その水準なのである。とてもじゃないが、母子3人の生計を維持することなどできない。

ちなみにこの母子3人が、生活保護を申請したとすれば、適用になるはずの最低生活費の額を調べてみると、17万円余。住居費を含めると22万余円になる。代理人としては、家裁で頑張るよりも、市役所へ行こうと言いたくなる。しかし、福祉事務所の不当な水際作戦に出くわしても、負けないだけの知識と度胸が必要だ。

 

【生活保護行政との闘い】

福祉事務所の水際作戦と言えば、こんなことがあった。DVで離婚した元依頼者のAさんのケースでのことだ。AさんはDVによる深刻なPTSDで働くことができず、夫の元から逃げ出して以降、ずっと生活保護を受けてきた。そしてAさんには、成人した息子がいるが、彼もまた父のDVの被害者であり、深刻なPTSDに苦しんできた。しかしこれまで彼は、Aさんとは何とか別世帯で暮らしていた。しかし自活することが困難となって母のところを頼るしかなくなり、最近になってAさんと同居し始めた。

私はAさんに、息子さんについても生活保護の申請をするように勧めてきたが、息子さんは、生活保護の申請することをためらい、Aさん一人分の保護費で、二人が生活をするという状況が続き生活は困窮した。そんな最中に、ケースワーカーがAさんの自宅を訪問したのだ。しかしケースワーカーがAさんに言ったことは「一人分の生活保護費で、二人が生活するのは法律違反であり、決まりを守らないと、あなたの分まで出せなくなるよ」だった。

Aさんからこのことを聞いた私は、ケースワーカーのあまりの対応に驚き、すぐにケースワーカーとその上司に面談を求めた。その面談でケースワーカーは、Aさんに「法律違反だ」と言ったことは認めなかったが、私から、ケースワーカーの自宅訪問の後、息子さんの体調がさらに悪化していること、Aさんが怒りのファクスを私に送ってきたことなどを指摘して抗議すると、対応に配慮の欠いた点があったかも知れないことを認めた。そして私から「本来、行政としては、就労不能の息子さんがAさんと生活しているのであれば、この息子さんについても生活保護の申請をするように促すべきだったのではないか」と問いただすと、ケースワーカーの上司は「息子さんから生活保護を受けたいという意思を明らかにしてもらえれば対応する」との意向を明らかにした。

この経過を息子さんに伝えると、彼はやっと生活保護を受ける決意をし、私も同行して、福祉事務所へ申請の意思を伝えに赴いた。その後Aさんには、この息子さんの分も加算された生活保護費が支給されるようになった。

当たり前の結果とはいえ、この当たり前のことを実現させるのに、日本という社会は何と苦労の多いことだろうか。こうして私の怒りの種は、いつまでたっても尽きないのだ。

Contact Us

お問い合わせ・ご予約

まずはご相談ください。

電話アイコン

お電話でのお問い合わせ・ご予約

06-6947-1201

受付時間 平日9:30~17:30

メールアイコン

メールでのお問い合わせ・ご予約

ご予約フォーム
ページトップへ