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2009年08月25日
性被害・セクハラ裁判事例

職場でのセクハラ相談体制は万全に―会社の賠償責任が認められたケース― 弁護士 髙田 和加子

一、事案の概要

A子さんとB男さんは、冠婚葬祭業を営む企業C社に勤務していました。
A子さんは、新卒社員として入社しましたが、ほどなくして直属の上司D氏によるセクハラ被害に遭い、パート職員のB男さんに相談するようになりました。A子さんはある時、勇気を出してD氏に対してはっきりと拒絶の意思を示します。すると、D氏によるセクハラ行為は止んだものの、今度は、D氏によるパワハラが始まり、A子さんは職場で孤立していきました。

しばらくして、B男さんは、上司である係長から呼び出しを受け、妻帯者であるB男さんがA子さんと不倫しているのではないかとのいわれなき疑いをかけられます。そこで、B男さんは、A子さんがD氏からハラスメント被害を受けていて、自分が相談に乗っていたことを説明し、会社としてA子さんの被害に対し適切な対応をとってほしいと要望しました。

しかし、係長は、彼の上司である支配人には報告せず、この問題をひと月以上放置したうえ、二人の身の潔白を直接、支配人に示すよう迫りました。その後、支配人が被害申告の事実を知ってからも、会社は、B男さんに対して雇止めの通告をしたり、二人に対し退職勧奨をしたりして、二人は過度なストレスから体調を崩し、休職せざるをえなくなりました。さらに復職後も、会社は、二人が慣れ親しんだ接客業務とは全く異なる事務業務への配転を命じたため、二人は、会社の対応に絶望してやむなく退職するに至り、不適切な対応に終始したC社に対して、地方裁判所に損害賠償請求の訴えを起こしました。

二、判決の結論

裁判所は、C社に対し、被害申告に対する適切な対応をとらなかったとして、損害賠償金をそれぞれ二人に対して支払うよう命じました。なお現在、C社が控訴中です。

三、判断のポイント

(1) 本件に適用される平成11年施行の旧雇用機会均等法21条は、「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するこの雇用する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう雇用管理上必要な配慮をしなければならないと定め、旧労働省は、同条を受けて、事業主には、①職場におけるセクハラに関する方針の明確化、労働者への周知徹底、②相談・苦情への対応窓口の明確化、適切かつ柔軟な対応、③セクハラが生じた場合、事実関係の迅速かつ正確な確認及び適正な対処が求められることを指針で定めています(平成10年労働省告示第20号)。
しかし、当時、上記法律が施行されてから6年以上経過していたにもかかわらず、C社には、セクハラ相談窓口が設置されておらず、相談体制が整っていませんでした。そのため、A子さんの被害申告に対する対応が遅れ、事態を悪化させました。
(2) また、当時、C社の就業規則では、セクハラ行為を禁止するとともに、上司の職責として、従業員から具申された意見について誠意と責任をもって適切な措置を講じなければならないと定めていたにもかかわらず、被害申告を受けた上司らは、申告を放置したばかりでなく、被害者であるA子さんを支えていたB男さんを非難して理不尽な退職勧奨をしたり、二人に退職を迫ったりして、あたかも加害者側を庇うかのような違法な対応をとったのです。
(3) さらに、いったん休職していた二人が復職してからも、会社は、勤務地、業務内容・量について相応の配慮をすべき安全配慮義務を負っているにもかかわらず、その配慮を欠いた配転をしたため、この行為も違法の評価を免れませんでした。
(4) 以上のように、従業員からセクハラ被害の申告を受けた場合、事業主は、被害者の心情や立場に配慮し、迅速かつ適切な対応をとらないといけません。とくに、申告放置が賠償責任を発生させるという点はこの判決の特筆すべき点です。

今後は、職場でセクハラが起きないことはもちろんのこと、万一の場合でも良心的な対応がとられることを願ってやみません。

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