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2009年01月30日
DV性被害・セクハラ世界の女性
雪田 樹理

インドの女性に対する暴力 弁護士 雪田 樹理

【人権NGOの活動に参加】

昨年9月、ヒューマンライツ・ナウ(HRN)という人権団体の「女性に対する暴力プロジェクト」の一員として、インドに行ってきました。HRNは、国境を越えて世界の人権侵害を解決しようと、2006年に設立された人権NGOです。これまでに、会員が、カンボジア、フィリピン、タイ・ビルマ国境などを訪問し、現地で人権侵害の実情を調査し、改善のための提言を発表するなど、国際的な人権活動を展開しています。

私は、弁護士として、日頃の事件活動でかかわっている「女性に対する暴力」の分野で、自分の経験を、日本だけではなく、アジアという広い舞台でも生かしたいという思いから、このプロジェクトに参加しています。

今回のインド訪問は、プロジェクト最初の取り組みでした。実際の訪問にこぎつけるまで、約1年かけて準備しました。メンバーが東京と大阪にいるため、互いに行き来したり、スカイプというインターネット回線を利用したシステムを使って会議を重ねて、インドの女性達の人権状況や女性に対する暴力の法律などについて勉強しました。

 

【インドのDV法】

インドでは2005年にDV法が制定されています。日本のDV防止法は、配偶者間の暴力(夫又は妻からの暴力)が対象となっていますが、インドのDV法は、女性を、家庭の中の暴力から保護する法律です。暴力の定義も、日本のように身体的暴力とそれに準じる精神的暴力や性的暴力に限定されておらず、健康・安全・生命・身体等を害する身体的虐待、精神的虐待、暴言、性的虐待、経済的虐待と、あらゆる形態の暴力から女性を保護しています。

そして、保護命令の種類も、接近禁止や退去命令、電話等の禁止命令に限られる日本とは違い、生活費や治療費を支払わせたり、子どもの監護を命じたり、損害賠償を命じたりすることもできます。被害を受けた女性が自宅に居住することを認めたり、あるいは、夫に自宅の代わりの住居を提供させたり、夫を自宅から退去させることもできます。DVに関する基本的な考え方、保護命令やその他の仕組みは、インドの方が日本よりも先進的といえます。

 

【インドの女性たちの置かれた状況】

しかし、インドの女性たちの人権が、日本よりもより手厚く保護されているとはいえないえないのが現状です。

インドでは、女性が結婚をした後に、実家に戻って生活することは考えられません(男性の兄弟が家を継ぐため、女性は戻れない)。又、暴力を受けた女性が避難すべき公的施設も整っておらず、女性がホテル等に宿泊して避難することもできないため、女性たちは自宅にとどまるしかありません。そのため、女性達にとって、家から追い出されることなく、嫁いだ先の家で、安全に居住する権利が認められることが死活問題なのです。

暴力から逃れた女性達が避難しているシェルターを訪問しました。日本のシェルターと大きく違う点は、シェルター施設の横に、夫やその家族のための相談室が準備されていることでした。シェルターのスタッフが、避難している女性と加害者である夫やその家族との間の調整役をし、話し合いの結果、女性が夫の家に戻ることが一つの解決方法になっているのです。帰るべき家を持たず、かつ、自立する手段を持たない女性達にとって、一番の願いは、暴力を振るわない夫と結婚生活を送り続けることなのです。

訪問した時に出会った女性の中に、シェルターに来たのが2度目という人がいました。夫が不貞をして、彼女に暴力を振るい、子どもたちにも辛くあたったために逃げてきたが、1度目は、夫が「今後はやさしくする」と約束したので自宅に戻ったのですが、約束を反故にされ、再びシェルターに来ていました。彼女は、今度は、美容師になる勉強をして自立したい。子どもの親権を取りたいそうです。夫の元に戻るのではなく、自立の道を選択した彼女の表情は、輝いていました。

 

【最後に】

インドには、ダウリーと呼ばれる婚姻に伴う持参財に関連した暴力や自殺・殺人、幼児婚、女児殺しなどの、日本には存在しない形態の暴力もあります。しかし、具体的な暴力の様態や、暴力の根底にある家父長制的な考え方、性差別の意識は共通しています。

一昨年のパキスタン訪問に続き、今回もまた、困難な社会状況の中でも、ジェンダーに基づく暴力や人権侵害と、果敢に戦っている弁護士達と出会えたことは、私にとっての大きな収穫でした。

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