【水泳選手になぜ主人のポーズ、従者のポーズ?】
最近ではほとんど毎日といっていいくらい家庭裁判所に入り浸っている(?)私ですが、家裁の調停委員が男性の配偶者を指して多用する「ご主人」という言葉を聞くたびに、他にいい言葉はないのかなぁ、と思います。私自身も使うことがあり、「たかが言葉」なのかもしれませんが、対等なパートナーシップには不似合いな言葉だと思うからです。
そんなことを考えながら過ごしていたある時、新聞を読んでいて視線が止まったことがありました。「世界水泳メルボルン2007」のテレビ朝日の広告です(下の写真)。左側に居並ぶ北島康介ら男性選手には力強く腕組みするポーズを取らせ、右側の柴田亜衣ら女性選手には柔らかく広げた手をおなかの辺りで揃えるポーズを取らせていたのです。たった一人の例外もなく、男は「男用」の、女は「女用」のポーズでした。
「げっ。」思わず私は独り言。公共性をもつ放送会社のジェンダー問題に対する鈍感さに驚きました。
わざわざ解説するまでもないことですが、人の視線を気にしなければならない場面で、両腕を組むのというのは、優越性や自信の誇示を表す場合が多いですし、逆に、手をおなかの辺りできちんと揃えるのは、劣位性や謙虚さを表す場合が多いと思うのです。
部下のミスを叱責する部長さんはどっちのポーズ?
謝る平社員はどっちのポーズ?
明らかに前者は「主人のポーズ」で、後者は「従者のポーズ」です。
パターン化された行動様式は、関係性を如実に表わします。男女の関係性について、「男が主人、女は従者」、「男性は主要な業務、女性は補助的業務」という関係性が消えていない現実の社会の中で、それを反復再生産させるようなメディアに、私は違和感をおぼえるのです。
なぜ、放送会社は、鍛え抜かれた身体の女性選手たちにあのような不似合いなポーズをさせるんでしょう。それぞれに好きなポーズを取ってもらえばいいものを・・・・・・。
さて、話は飛んで、85年に批准された女性差別撤廃条約には、「両性いずれかの劣等性若しくは優越性の観念・・・・・・の撤廃を実現するため、男女の社会的及び文化的な行動様式を修正すること。」(第5条のa)との内容が書かれています。また、99年に制定された男女共同参画社会基本法には、「社会における制度又は慣行が、性別による固定的な役割分担等を反映して、・・・・・・男女共同参画社会の形成を阻害する」ことのないよう、「男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響をできる限り中立なものとするよう配慮されなければならない。」との規定があります(第4条)。
「たかが言葉」「されど言葉」・・・・・・。無意識に使われている「ご主人」という言葉に、私はやはりひっかかってしまうのです。