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2007年07月30日
DV
乘井 弥生

講演会「DVと警察」に参加して 弁護士 乘井 弥生

【DVに消極的な警察をどう変えたか】

去る6月30日、大阪弁護士会は、バッキンガム大学のスーザン・エドワーズ教授をお招きして「DVと警察」と題する講演会を開きました。配偶者間の暴力、いわゆるDVは、刑法上、傷害、暴行、脅迫、強姦、器物損壊といった犯罪に該当することが多いにもかかわらず、殺人や重い傷害といった事案を除き、「家庭内のとるに足らないこと」として、長年、刑事手続きにおいて適切に扱われてきませんでした。このことは日本でも英国でも事情は同じであり、全世界に共通する問題です。

エドワーズさんは、英国において、「見えない犯罪」であったDVを「犯罪記録」として明らかにしていくことに尽力をし、さらに、DV事件への警察の介入方法を改善するのに貢献をした方であり、当日も、英国の警察官がDV事件の事情聴取を行う際用いることとなっている「DVリスク評価ツール」を指し示しながら、どのようにして、DVに消極的であった警察を変えていったのかというお話をされました。

DVに苦しむ女性は、暴力の被害者として刑事手続きに関わるとともに、ある場合には、加害者として、刑事手続きに登場します。夫からの暴力と虐待に長年苦しみ、その苦しみを終わらせる手段として、夫殺しの罪を犯すことがあるのです。しかし、このときにも、刑事司法は事件の背景にあるDVを理解せず、女性は不当な扱いを受けることがあると、エドワーズさんは指摘します。

例えば、犯罪の違法性を阻却する事由として、正当防衛があります。正当防衡が成立するためには、「急迫不正の侵害」に対して、自分の身を守るためにやむを得ず行ったものであることが必要です。攻撃にさらされた「その時」「その場」で応戦するときにのみ認められる抗弁です。

しかし、夫の暴力に苦しむ女性が夫に反撃を加えるとき、正当防衛が認められることはまずありません。なぜなら、殴られる妻は、暴力をふるう夫との間の身体的優劣を痛感しており、素手で応戦したところで所詮かなわないことを知っているため、暴れている「その時」「その場」で反撃をすることは少なく、夫が酔いつぶれているとき、寝入っているときに、攻撃がなされることが多いからです。

 

【ジェンダーの視点から法を見直す】

「殺さなければいつか自分が殺される」と思い詰め、「死ぬことでしか家族関係を終了させることができない」と心理的に追いつめられた女性の状態は、一般の事件とは異なる様相を示すものであり、現行の刑事手続きではDVはまだまだ理解されていないと、エドワーズさんは指摘します。

エドワーズさんは、「立法者も法の実践者も男性中心であるため、世界は男性の視点で定義され、女性の被害は存在しないもの、大したことないもの、目に見えないものとしてみなされ、表現されている」と講演の中で述べられましたが、ジェンダーの視点から法を見直すという問題提起は示唆に富むものであり、「DVと警察」というテーマに止まらず、大変有意義な講演会でした。

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