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2006年08月11日
仕事・労働裁判事例
宮地 光子

住友金属事件勝利和解と間接差別 弁護士 宮地 光子

【職場での平等を求めて立ち上がった女性たち】

本年4月26日は、私にとって忘れられない日となった。朝刊には「男女差別訴訟一住金と女性社員和解」と、前日に大阪高裁で成立した住友金属男女賃金差別訴訟の勝利和解が大きく報道された。そしてこの同じ日、すでに解決していた住友電工男女賃金差別訴訟の元原告西村かつみさんが、均等法改正を審議中の参議院厚生労働委員会に参考人として呼ばれ証言した。

振り返れば、住友4社の女性たちから差別に悩む声を聞いたのは、もう十数年も前のことになる。住友金属、住友化学、住友電工の女性たちは男性社員との昇格差別、そして住友生命の女性たちは、未婚女性との昇格差別が問題になっているという点では違っていたが、均等法が施行されても、職場の中の平等は、少しも前進しないという点では共通した問題点を抱えていた。

1994年に「不十分な均等法だけれど使ってみよう」と当時の大阪婦人少年室に調停申請を行ったが、調停が開始されたのは住友金属のみで、他は不開始。翌年、住友金属に対して示された調停案も全く実効性のない期待はずれのものだった。あとは裁判しかないという時になって、私が考えたのは、勝てるかどうかより、諦めたくないの一念だった。翌1995年に提訴。住友4社で合計21名の女性たちが立ち上がった。

この4社の最後の解決になったのが住友金属事件であり、一審の勝利判決を踏まえて高裁では原告4名で解決金の総額は7600万円となった。同時に会社は、今後女性労働者の処遇について十分な配慮をしていくことを約束した。

そしてこの和解にあたって高裁の井垣敏生裁判長は、和解勧告文を明らかにし、「過去の意識に支配された人事制度などが改正され、性中立的システムが構築されたかに見えながら、実際には、賃金処遇等における男女間の格差が適正に是正されたとは言い難い現実」を指摘するとともに「このような現実は、真の男女平等に向けた意識改革が十分に深化することなく、均等法等を受けて、表面的な整合性を追い求めることからくるものではないかと思われる。そのような意識改革の遅れが、新たな差別(間接差別や女性を中心とした非正社員化等)を生み出す土壌となることに十分な留意がされるべきであり、企業のみならず、社会においても、意識改革に一層真剣に取り組むことが求められる。」と企業社会に警鐘をならした。

 

【改正均等法と間接着別】

この井垣裁判長のもとで、2003年12月に昇格を含む勝利和解を実現していた住友電工の元原告の西村さんは、参議院厚生労働委員会での参考人としての証言で、和解による変化に言及した。

「和解の結果、私は課長クラスの主席に昇格しました。主席になってその与えられる情報量の違いにまず驚きました。また、権限が格段に広がります。判断することは多くなり、やりがいがあります。判断していくことによって自信もつきます。昇格とはこういうものなのか、もう少し若いときに昇格しておればと、改めて差別の残酷さを感じました」と。

しかし自らの処遇が改善される一方で、企業の中には、事務職を3年から5年の有期契約でしか採用しない若年定年制の再現と思われるようなやり方をとるところが出てくるなど「雇用形態や処遇の仕方を変えて男女差別は生き延びている」ことを指摘し、間接差別を全面的に禁止するように求めた。そして衆議院の審議でも、共産党・社民党の各議員は、住友裁判を素材に、間接差別を全面的に禁止する均等法改正が、今こそ重要とせまってくれた。

6月15日に成立した改正均等法は、残念ながら、間接差別の禁止の判断を省令で定める予定の3つの場合(①募集・採用時の身長・体重・体力要件②総合職採用時の全国転勤要件③昇進時の転勤経験要件)に限って行うもので、国際的な間接差別禁止の水準にはほど遠いものである。

しかしながらWWN(ワーキング・ウィメンズ・ネットワーク)などのNGOやユニオンの取組みは、法律に5年後の見直し規定を盛り込ませ、さらには附帯決議で、間接差別は省令で規定するもの以外にも存在しうるものであることを確認させた。また改正法施行の5年後の見直しを待たずに、機動的に対象事項の追加、見直しを図ることも附帯決議に盛り込まれた。形をかえて生き延びようとする男女差別と私達とのたたかいは、まだまだ続きそうである。

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