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ニュースレター

2005年01月30日
性被害・セクハラ性差別・ジェンダー
雪田 樹理

犯罪被害報道とジェンダー 弁護士 雪田 樹理

横山ノック前大阪府知事の強制わいせつ事件から丸5年が経過した昨秋、今度はタレントの島田紳助の傷害事件を担当することになって、マスコミ報道と直面した。

5年前のノック事件では、多くの女性が、訴えた被害者の姿に勇気を得たと言って、自らも声をあげ始めた。性被害を受けた女性が、加害者の責任を追及するために声をあげることは当たり前のこと、そんな杜会の気運を作る一つのきっかけになった。

それから数年後、DV防止法が制定された。単なる「夫婦喧嘩」として扱われてきた夫婦間暴力が「犯罪」として認識されるようになり、この日本でも、「女性に対する暴力」が、ようやく表舞台で人権問題として語られ始めた。

昨秋の傷害事件も、芸能界やマスコミに影響力を持った売れっ子男性タレントが、その圧倒的優位さに奢り、一女性に対して執拗に暴力を振るった「女性に対する暴力」としての性格をもった事件であった。

ここ数年、「女性に対する暴力」は犯罪であり、人権侵害であるという認識が、確実に広まっており、事件を訴える被害者の数も急増している。

しかし、残念なことに、女性に対する暴力犯罪の被害報道には、5年後の今もなお、ジェンダーに基づくバッシングが消え去っていない。

5年前のノック事件の時、著名人である曽野綾子氏や上坂冬子氏が、「被害現場で声をあげずに、司法に救済を求めるのは女性の甘えだ」という論調の被害者バッシングを行った。犯罪の加害者を責めるのではなく、被害女性を非難するというお決まりの「セクハラ神話」であった。

同じことが5年後の紳助事件でも繰り返された。告訴をした被害女性に関して、「帰国子女」「はっきりと物を言うタイプ」といった言葉を使って、架空の女性人物像を描き出し、「きちんと自己主張する女性は多少の暴力を受けても仕方がない」と言った論調の被害者バッシングが、一部マスコミ報道に見られたことである。残念なことに、女性芸能レポーターにその傾向が強くあらわれていた。(ただし、「帰国子女」や「はっきりと自分の意見を言う女性」を否定的に捉えて、この機会にとばかりにバッシングする日本社会の現状を、冷静に分析・批評していた女性ジャーナリストがいたことも指摘しておく。また、「帰国子女」は事実と異なる情報操作であった。)

5年前と比較すると、現在では、犯罪被害者支援基本法も成立し、メディアが犯罪被害者の人権を取り扱う機会が随分と増えている。一般的な被害者保護の重要性は、社会的な認知を受けていると言っていい。

しかし、現在でもなお、変わっていないものがある。同じ犯罪被害者であっても、男性からの暴力被害を受けた女性は、未だに誹謗中傷や名誉棄損の二次被害を受けるという現実である。自らの被害の回復を求め、加害者の法的責任を問うこと、こういった当たり前の権利を行使したとき、被害者が女性の場合には、その行動が非難されてしまうのである。日本の芸能界やメディアには、「女のくせに偉そうにごたごた言いやがって」というジェンダー・ハラスメントが、まだまだ大手を振るって残っているらしい。

マスコミのみなさん、ジェンダーに敏感な報道を、ぜひ、頼みますよ。

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