離婚訴訟の根拠となる法律として人事訴訟法がありますが、今年4月から、新人事訴訟法が施行されています。
新法のポイントは、①人事訴訟の家庭裁判所への移管、②家庭裁判所調査官による事実の調査制度の新設、③参与員制度の新設、④人事訴訟の土地管轄の変更等多岐にわたりますが、ここでは①と④について触れたいと思います。
当事者間で離婚の話し合いができないとき、まず、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。そして、調停でも話し合いが整わないとき、離婚訴訟を起こすことになります。従来、この離婚訴訟は、地方裁判所へ起こすことが定められていましたが、今回、離婚訴訟についても地裁ではなく家裁が扱うこととなりました。家庭裁判所の機能を充実させることにより、人事訴訟の一層の充実・迅速化を実現しようというのが立法目的です。
今回の新法成立では土地管轄の変更もありました。土地管轄というのは、離婚裁判を起こすとき、どこの裁判所に起こすことができるかという問題です。従来の法は、
(1)夫婦が共通の住所を有するときは、その住所を管轄する地方裁判所
(2)夫婦が最後の共通の住所地を管轄する地方裁判所区域内に夫又は妻が住所を有するときは、その住所地を管轄する地方裁判所
という順番で定められていました。
ところが、この規定が女性にとって不都合な場合が多々ありました。
例えば、DV事件のケースでは夫の暴力から逃れるため、住んでいた家を遠く離れて新たな生活を始めることがほとんどですが、従来の規定では、夫と最後に住んでいた住所地の裁判所で離婚裁判を提起しなければならなかったからです。
遠方の場合、交通費や弁護士の日当は大きな負担となります。
今回、新法では、土地管轄を拡大し、原告と被告のどちらの住所地でも裁判を行うことができるようになり、この面では、離婚裁判が提起しやすくなったといえます。