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2004年01月20日
性被害・セクハラ裁判事例
乘井 弥生

性暴力の二次被害をめぐって 弁護士 乘井 弥生

「証拠処分は『違法』兵庫・西宮署強姦捜査中 県に賠償命令 神戸地裁」

昨年10月、新聞で取り上げられたこの事件の記事をお読みになった方はおられるだろうか。依頼者であるAさんが自宅アパートで就寝中、強盗強姦の被害にあったのは1995年6月。当時彼女は19歳の大学生だった。その日のうちに西宮署に刑事告訴し、証拠品を提出。現場での実況見分立会、病院での受診、被害者調書の作成等、彼女は全面的に捜査に協力した。娘の将来を案じ両親は告訴に反対したが、彼女は押し切った。自分と同じ思いをする女性を二度と出したくないとの強い思いが、事件で傷ついた彼女の気持ちを奮い立たせたのである。

ところが、その秋、彼女が写真面割で犯人に酷似した人物を指し示した頃から警察の対応がおかしくなる。担当捜査官によって捜査打ち切りともとれる言動がなされ、彼女は大きな衝撃を受ける。後に分かったことであるが、この時期警察は重要な証拠品を焼却し(当初、紛失と発表)、さらには、捜査の基本書類すら作成していなかった。

警察による捜査が中断された直後より、Aさんは不眠、部屋に他人が侵入してくる内容の悪夢、気分のおちこみ、絶望感、自責感といった症状(PTSD)に苦しむこととなる。日常生活に支障を来たし、大学の休学を余儀なくされた時期もあった。

2000年秋・西宮署に捜査状況を問い合わせたところ、「証拠を紛失した」と告げられ、彼女は、2002年、提訴に踏みきった。

原告本人尋問において、県側代理人弁護士はAさんに対し、「あなたが受けた損害というのは犯罪被害者として受けた精神的・肉体的苦痛ではないのか。」と質問。これに対し、彼女は「犯罪被害そのものよりも、捜査段階での警察からの行動のほうが私にとっては大きな心の傷となっている。」と答えている。

彼女は確かに性暴力によって心身ともに傷ついたが、被害者が自分自身の価値を取り戻し、杜会に対する信頼を回復するための役割をもつべきその後の刑事手続の中で、彼女は逆に傷ついた。警察に見捨てられ裏切られたことが、彼女を絶望に陥れたのである。

性暴力の二次被害は、ときに暴力行為以上に被害者の心にダメージを与えるが、このことは意外に知られていない。

2003年10月29日、神戸地裁は、「被害者が類似事件を増やしたくないとの強い思いで提出した証拠品を正当な理由なく焼却したことは、人格権の侵害にあたる」との内容で、兵庫県に慰謝料20万円の支払いを命じる判決を下した。

今年、大阪高裁で控訴審がはじまる。

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