【根強く残る婚外子差別】
2013年9月4日、最高裁大法廷は、婚外子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法の差別的な規定について、憲法14条1項(法の下の平等)に違反すると判断した。
この決定により、長年に渡り、国内外から人権侵害性を指摘されてきた相続分差別の問題が、ようやく決着した。最高裁の決定を受け、民法の改正がなされたが、この民法の規定がなくなっても、法律婚という形態をとらない当事者と、その子ども達に対する差別と不利益とが、全て解消された訳ではない。
その背景には、日本社会に根強く残る、法律婚から生まれる子を「正統」とみなし、それ以外を「正統でない」とみなして、区別する(あるいは不利益を容認する)考え方がある。さらに、現在でも、民法には「嫡出子」という文言が散見され、出生届にも、嫡出・非嫡出のチェック欄がある。
最高裁は、このチェック欄については、上記婚外子の相続分についての違憲判決をなした直後、2013年9月26日に、「出生の届出に嫡出子又は嫡出子でない子の別を記載すべきと定める部分は憲法14条1項に違反しない」と判断しており、司法の場でも、上記偏見が残っていることが示されてしまった。
ただ、最高裁の決定には、「他に確認の手段があるのであるから、必ずしも事務処理上不可欠な記載とまでいえない」との補足意見があり、チェック欄の根拠となっている戸籍法49条に対し、この規定が婚外子差別を助長しているのではないか、改めて問い直す必要がある。
【非婚ひとり親家庭が受けている不利益】
婚外子差別の具体的な例として、影響の大きなものに、所得税法における「寡婦控除」の問題がある。
寡婦控除は、死別、もしくは離別後、子どもを養育しているひとり親に対し、一定の所得控除が受けられる国の税制優遇措置である。しかし、同じひとり親家庭でも、一度も結婚をしていない(非婚)ひとり親家庭は、適用が除外されている。
ひとり親家庭、特に母子家庭の貧困は、いまや大きな社会問題となっている。その中で、同じ母子家庭でも、とりわけ、経済的に困難な状況に直面する非婚母子家庭に対し、税制上の優遇措置を差別的に適用しない規定は明らかに不合理である。
この規定は、より困窮するひとり親に対して、より重く課税するため、経済的格差をより拡大させるという点で極めて問題があるだけでなく、租税を衡平に課すという大原則からも外れてしまっている。これは所得税だけの問題に留まらず、課税所得を基に定められる保育料や公営住宅家賃等、日常生活に関わる様々な不利益を、非婚ひとり親家庭に課す結果となっている。
【近畿弁護士会連合会の取り組み】
日弁連では、2014年1月16日に、「『寡婦控除』規定の改正を求める意見書」を提出し、同規定の是正を求める意見を発表した。地方自治体によっては、「みなし寡婦控除」により、寡婦控除が適用されたのと同じ計算方法で、保育料や公営住宅家賃の算定を行い、不利益の緩和を図っているが、未だ、抜本的な解決には至らず、差別が放置されている状態が続いている。
以上のような問題について、近畿弁護士会連合会では、2015年7月25日に、夏期研修「非婚・未婚・事実婚と子ども達〜今、多様な「家族」の在り方を考える〜」を開催した。同研修については、当事務所の雪田弁護士、乘井弁護士、和田谷弁護士、角崎も実行委員として参加した。今後も、差別的な寡婦控除規定の改正を求め、この問題に注目して行きたい。