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2017年01月11日
性被害・セクハラ
雪田 樹理

性犯罪に関する刑法改正案が答申される  【弁護士 雪田樹理】

昨年9月12日、2年間の議論を経て、法制審議会が、性犯罪に関する刑法改正案を法務大臣に答申しました。法務省は、今年の通常国会への上程を目指していると報道されています。

 

【現行の刑法は】

刑法の性犯罪規定は、強かん罪と強制わいせつ罪の二元的な構造により、1907年に制定されました。これらは、明治民法下の家父長制を維持するため、「性的秩序」という社会的法益を守るための犯罪として規定されたもので、個人の性的自由を守るためではありませんでした。

つまり、男系世襲制のもとで、女性は子どもを産み、家のために子孫を増やすための道具とされていた時代、家制度を守るために、女性には貞操維持義務が要求され、夫以外の男性から意に反する性交を要求された場合、暴行や脅迫に容易に屈するような貞操は保護に値しない、強かん罪の成立には「暴行又は脅迫」が必要とされました。

戦後、男女平等を規定した日本国憲法が制定され、家制度が廃止され、妻だけが罰せられていた姦通罪も廃止され、性犯罪の規定は個人の法益を守るためのものと解釈されるようになりましたが、刑法の条文はそのまま残っています。

そして、判例は、「暴行又は脅迫」の程度について、「相手の反抗を著しく困難にさせる程度の暴行・脅迫」を要求しています。性暴力を受け、精神的に混乱し、恐怖心から心身ともにすくみ、強く抵抗することができなかった場合には、強かん罪は成立しません。また、「暴行又は脅迫」がなくとも、強かん罪が成立するのは、12歳までの女児の場合とされています。

そのため、多くの性暴力は犯罪とされることなく、野放しになっているのが現状です。

こういった日本の性犯罪の規定は、国際的な人権水準にはほど遠く、日本政府は、国連の各人権委員会から、①強かんの定義を拡大すべき、抵抗したことを被害者に証明させる負担を取り除くべき、③男性・男児も保護すべき、④性交同意年齢を13歳以上に引き上げるべき、⑤非親告罪とすべき、⑥近親姦を個別の犯罪にすべきなどの勧告を何度も受けてきました。

 

【今回の答申の内容は】

今回の改正案は、明治以来の大規模な改正といわれていますが、果たして性暴力の実態に見合ったジェンダー平等を実現する改正案なのでしょうか。

主な改正点は、①強かん罪や強制わいせつ罪を非親告罪とする(現行は、被害者等による告訴がなければ公訴提起ができない親告罪)、②強かん罪の構成要件を見直し、行為者と被害者の性別を問わないものとし(現行は、強かんの被害者は女性のみ)、強かん罪の対象となる行為を「性交等」(膣性交、肛門性交、口淫性交)とする(現行は「姦淫」すなわち膣性交のみ)、③強かん罪の法定刑を5年以上の有期懲役に引き上げる(現行は3年以上)、④18歳未満の者を現に監護する者がその影響力に乗じて性交等やわいせつ行為をした場合にも罪とする犯罪の新設です。

強かん罪を、性差のないものとすること、姦淫以外の肛門性交や口淫性交も姦淫と同等の被害とすること、18歳未満の子どもの監護者(保護者等)がその影響力に乗じて犯行に及んだ場合に犯罪とすることなど、人権保障の面から一定の前進がみられます。また、非親告罪とすることで、性犯罪もその他の犯罪と変わらない犯罪と位置付けられることの社会的意味は大きいといえますが、これまで以上に司法手続きにおける二次被害の防止、被害者の保護が必要となります。

 

【今後に向けて】

しかし、残念ながら、今回の改正案の答申には、強かん罪の本質的な価値の転換となる「暴行又は脅迫」要件の見直しは含まれていません。また、性交同意年齢の引上げ、地位や関係性を利用した性行為に関する規定の創設、配偶者間における犯罪成立の明示、公訴時効の廃止や停止といった重要な論点も見送られました。

今回の答申に基づいた法改正が実現されるべきであることはいうまでもありませんが、私達は、さらなる改正に向けて、大きな声を上げ続けていくことが求められています。

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