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2017年01月11日
性被害・セクハラ
髙坂 明奈

警察の事件放置~性被害にあった被害者への二次被害について考える~  【弁護士 髙坂明奈】

【突然の警察からの連絡】

Aさんは、中学生の時にレイプ被害に遭いました。事件日以前に面識がない人物からの被害で、Aさんはそれまで性交渉の経験はありませんでした。被害後、Aさんは生きることがどうでもよくなり自傷行為を繰り返しました。警察に被害届を出し、事情聴取を受けたものの、精神的ショックが大きく、これ以上、捜査に協力はできないと警察に告げました。それから約6年以上、Aさんの事件の捜査は中断したままとなりました。

しかしながら、昨年の春に突然、警察から連絡があり、「あのときの事件をもう一度捜査したい。警察で事情を聞かせて欲しい」と言われました。Aさんとしては、どうして今になって事件のことで呼び出されるのか分からず、忌まわしい事件を思い出すことに強い抵抗がありました。しかし、家族からも警察に協力するよう言われ、警察に出向き、再度事情聴取を受けることになりました。

Aさんは、警察で事情を聴かれることが苦痛で、事情聴取の後に自傷行為に及んでしまうこともありました。しかしながら、「犯人を捕まえる」「頑張ろう!」と警察官に励まされ、捜査に協力しました。私は、警察で捜査が行われている途中(比較的後半)で、Aさんから依頼を受け、代理人に就任し、Aさんの付添いをしました。

 

【不起訴の告知】

警察で一通りの捜査が終わり、事件は検察庁へ送致されました。警察からは、犯人が見つかったこと、しかし、犯人が自分は当時複数の人物にAさんと同様のこと(自宅に連れ込んでレイプをすること)を繰り返しており、Aさんのことを覚えていないと言っており、起訴はもしかすると難しいかもしれないということを聞かされました。

そして、Aさんは、検察官から事情聴取のための呼び出しを受け、私も同行し、検察庁へ訪れました。挨拶もそこそこに検察官から聞かされたのは、不起訴の予定であるというということでした。その理由は、犯人が覚えていないと言っており、客観的証拠がないということでした。捜査再開後、Aさんの事件直後の膣内分泌物は科捜研で調べられましたが、犯人のDNAは検出されなかった(時間が経っているので検体の劣化による可能性も十分考えられる、また避妊具を使っていれば検出されないこともある)、犯人が裁判で自分はやっていないと否認をすると無罪となる可能性があるからと説明されました。Aさんはショックのあまり、涙が止まりませんでした。

 

【捜査の問題と現行法の問題】

本件における大きな疑問は、なぜ6年以上もの間、捜査が中断し、突然再開されたかという点です。昨年、大阪府警の全65警察署のうち61署で捜査関係資料が放置され、大量の事件で公訴時効が成立していた問題が明るみになりました。そのため、各警察署において放置されている事件がないか調査がなされたようです。その結果、Aさんの事件が浮上し、捜査が再開されたのです。

しかし、事件発生から6年以上が経過していることからすると、捜査をし、犯人が判明しても不起訴になる可能性は十分に見込めたのではないでしょうか。そのような中、警察の怠慢を明らかにせず、Aさんに「頑張れ」と言い、供述をさせたのは二次被害であると思います。強かん罪(177条)は親告罪(被害者の告訴がなければ起訴できない犯罪)です。そのため、被害者が捜査に協力できないというと、捜査機関が捜査を差し控える傾向にあり、このような事件放置が発生しやすい状況になっています。

また、検察官は、面接の際にAさんに民事でたたかうことができるなどと言いました。しかし、刑事事件の不起訴記録において開示がされるのは実況見分調書等の客観的証拠のみで、本人の供述調書は本人の同意があっても開示はされません。そのため、Aさんが苦痛に耐えながら警察署で証言した内容について、私は閲覧することができず、民事裁判をするとなるとまたも一から聴き取りをしないといけないのです。これは三次被害です。繰り返し証言をすることの苦痛から民事訴訟を諦める方もいます。

Aさんのような被害者が一人でも減るよう、現行法の改正を求めます。

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